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第4話 出会いの季節(4)

 委員会が決まったあと担任から放課後話があるからということで、吉野と二人教室に残る羽目になった。入学してからというもの僕はひたすら本を読んでいたためか他人と話すことなく無事に一人で学校生活を過ごすことができていた。一方で吉野は持ち前の明るさと容姿のさわやかさからか男女関係なく友好関係が広がっており、クラスの人気者となっていた。  そんな人気者と只今教室で二人きりの状況。 「染井っていつも本読んでるよな~。今はどんな本読んでんの?SF?ミステリー?まさか恋愛小説!?それって面白い?なんてタイトル?一回見して見して」 「・・・・・・」 「あ!そうだ染井ってどこら辺に住んでんの?電車通学?それともチャリ通?俺はね電車通学!俺の住んでるところ結構な遠くで田舎でさ~。本数少ないうえに片道2時間かかるんだよなぁ。だからこれからもっと朝早くなると思うと起きれっか心配になってくるんだよなぁ」 「・・・・・・・・・・・・・」 「そういや染井って・・・・」  大概うるさい!!!なんなんだこいつ!僕がずっと無視しても気にせずに話しかけてくる! 普通なら無視されているのがわかったら空気を読んで話しかけてこなくなるだろ!  あれか!こいつはみんなに好かれていないと気が済まないタイプか?それとも同じ委員会になったから仕方なく友好を深めようと頑張っているのか!?だとしたらとんだ迷惑だ!僕はできることなら3年間誰とも関わり合いたくなんてないのだから!  今も、永遠と一人でしゃべり続けている。若干狂気すら感じてきたがそれよりもイライラが収まらず、悪態がついに口からあふれてしまいそうになった時、教室の扉が開き担任の教師が入ってきた。 「おお二人とも待たせてすまんなー。美化委員会のことでちょっと話があってな。」  あ・・・危なかった。もう少し遅ければこの野郎に罵詈雑言をまくしたてるところだった。 「あ!先生~遅いっすよ~。話ってさっそく何か仕事っすか?」 「いや仕事というか、連絡事項があってな。実はな急なんだが明日美化委員会の1年だけで説明会と仕事内容の割り振りを行うことになってな。すまないが放課後残ってくれ。」 「はーい。連絡ってそんだけっすか?」 「いや、まだある。明日の説明会の内容をな添木:(そえぎ)にも伝えてやってくれないか」  ん?添木?そんな奴がいただろうか。苗字的には僕の席の近くにいるはずだが、一度も名前を聞いたことがない。 「添木って確か、入学式以降きてない男子っすよね?」  入学式以降来ていない男子・・・あっ!あの頭が訳の分からない色した目つきの悪いヤンキーか! 「ああ。あいつな入学式の時盲腸になってそのまま入院してな。今週末退院するから登校するのは来週でな。」  あのヤンキー、ただのサボりかと思ったけど入院してたのか・・・ 「へぇ~そうだったんっすね。というかなんで添木に説明会の内容を伝えるんすか?まさか添木も美化委員会?」  え? 「ああ。昨日添木に連絡とってみたらなあいつ入りたい部活も委員会も特にないって言ったからな。」 「それでなんで美化委員会なんすか?」 「そりゃ、俺が顧問の委員会だからな。他より融通が利きやすいんだ。」 「あ~なるほど。」  なるほどね~・・・ ってなるか!!完全に騙された!!  募集人数が他より少なかったのは不人気だからとか仕事が少ないからとかじゃなくてもう一人決まってたからだったのか!!そんなこと聞いてないぞ!詐欺だ!不当契約だ!  しかも頭サーカスのヤンキーだと!?入学式の時に絶対に関わりたくないと思った二人とまさか三年間同じ委員会なんて・・・ 大体顧問だったら先生が説明会の内容を伝えればいいじゃないか。 「親睦を深めるためだよ。染井」 「ぇ・・・」 「いや、先生が伝えればいいじゃんって顔してたからな。俺から伝えてもいいが、三年間同じ委員会に所属するもの同士交流を深めたほうがいいと思ってな。」  ニコッと笑うがどこか胡散臭い雰囲気を醸し出す担任教師。笑顔が生徒の不信感を煽るような教師は教師としてどうなのだろうか。というか顔色から心を読むなんて妖怪かこの教師。 「じゃ、そういうことで明日の説明会と添木のこと頼むな。染井、吉野。」  そう言い残して先生は教室を出て行った。 僕はというと、これから先のことを思い小さく、でも深いため息をつくのだった。  

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