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第8話 出会いの季節(8)

 一限が終わると僕はすぐに添木に話しかけた。  「添木、今時間いいか?」  「!?・・・・・・お、おう」  ・・・・・・今すごく驚いたな。ああそうか添木にはまだ自己紹介してないから知らないやつに話しかけられて驚いたのか。  「僕は染井春樹。添木と同じ美化委員で担任から委員会の説明を頼まれた。なので今日の放課後残って欲しい」  そういうと添木は目を見開いた後、自己紹介の時の様に目つきを悪くし答えた。  「おう!・・・・・・あぁいや、分かった。放課後だな染井」  「ああ。それじゃまた放課後」  そして放課後、  「なんでお前までいるんだよ」  「え?だって俺も美化委員だし!それに添木とも話して見たかったしさ!ああ俺は吉野咲良ね!吉野でも咲良ちゃんでも好きに呼んでよ!それでさ、添木は・・・」  「・・・・・・・・・・・・」  いきなり吉野に話しかけられて、添木は面食らっていた。  「吉野待て、僕の用が先だ」  「ああそっか!わりぃわりぃ!」  危なかった。こいつは話し出すと止まらないからな。  「じゃ添木、時間がもったいないから手短に説明する」  「・・・・・・おう」    僕は金曜日の説明会の内容を手短に添木に伝えた。  美化委員会の仕事は主に校舎の清掃と花壇の世話だ。美化委員は初めに各クラスごとに担当の清掃場所と花壇を決められる。この担当は一年間変わることはなく、朝は自分たちの花壇の世話をし、放課後に決められた場所を清掃する。基本の仕事はこれだけだ。あとは季節ごとに何かしらの仕事があるらしいが、それはその時になったら説明するらしい。  「以上が、金曜日の説明会の内容。それじゃあとは二人でお好きにどうぞ」  「染井待て。質問がある」  早々に立ち去ろうとした僕を添木が引き留めた。  はぁ・・・僕は一刻も早くこの空間から離脱したいのに。  「・・・・・・何?」  「俺らの担当する清掃場所と花壇はどこの花壇だ?」  「それがさぁ、俺らだけ唯一校舎裏にある花壇なんだぜ~。除け者なんてひどくね?」  僕の代わりに吉野が愚痴交じりに答えた。    そう、僕らの担当する花壇は校舎の裏にある花壇だ。なんでそんな誰も来ないところにあるのか担任に聞いてみたところ、少し前まで駐輪場が校舎裏にあったそうで、今の場所に変更する際に空きスペースにとりあえず花壇を作った、とのことだった。  なんて計画性のない教師だ。  「へー。じゃ俺らの掃除場所は?」  「俺らの担当場所は・・・・・・えーと・・・・・・染井、どこだっけ?」     それくらい覚えておけよ。  「・・・・・・体育館周辺と体育館と校舎をつなぐ渡り廊下」  「そうそう!体育館の周り!!・・・・・・ってか今日からじゃん!清掃!!」  「・・・・・・だから今添木に説明してるんだよ。ついでに言うなら、僕が説明してる間に吉野は掃除している想定だった。」  「ああ、そうだったんだ!わりぃな、俺も添木と話してみたかったからついな」  そういって無邪気に吉野は笑う。  ちょっと棘のある言い方をした僕が馬鹿みたいじゃないか。  「よし!それじゃ早速行こうぜ、染井!添木!」  そう言って、吉野は強引に僕たちを体育館へと連れて行った。

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