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第9話 出会いの季節(9)

 体育館へ着くと吉野は驚くほど速く掃除道具を取り一人で渡り廊下の方へ少し小走りで向かっていった。  その為自動的に僕と添木の二人で体育館周りを掃除する事となった。   僕は早く帰りたい一心で手早く箒を取り、体育館の周りの掃除を始めた。  ・・・・・・   僕は勿論、添木も基本的には無口らしい。少し近づけば触れ合うほどの距離にいるのに僕と添木の間には沈黙が居座り続けた。 そんな空気を埋めるように体育館からは部活に打ち込む青春の声がけたゝましく聞こえていた。  「お前俺が怖くねぇの?」   掃除がひと段落したところで、沈黙を破ったのは意外な事に添木だった。   「は?」   「あ、いや、俺さ、良く怖がられるんだわ」   特に染井みたいなタイプの人にはさ、と添木は半分諦めたように笑いながら話を続けた。  「だから染井が初めに話しかけてくれたことがなんつうか・・・・・・その、意外だなって思ってよ」   なんだ、そんな事か。   「別に、添木の事を怖いとは思わない」  僕は人間を怖いと思ったことがない。嫌いなだけだ。  「そっか・・・・・・」   そう呟くと、添木は顔を伏せ色とりどりの前髪を弄りながら静かに笑った。   「・・・・・・」   なんだこの空気は   今まで感じたことないい居心地の悪さを感じる。   「これからよろしくな、染井」   そんな風に笑う添木にどう悪態をついてやろうか考えているうちに、掃除を終わらせた吉野が戻ってきた。

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