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第10話 出会いの季節(10)
高校に入学して、もうすぐ一か月が過ぎようとしている。
高校生活というものも慣れてしまえば、中学生活とあまり変わらないものだ。
登校し、授業を受け、帰る。
これの繰り返しだ。
ただ中学生活と違うことは
「おーい!染井ー!添木ー!一緒に学食いかねー?」
まとわりつく他人がいるという点だ。
「おー俺行くわー」
添木は、未だに周囲に馴染めたとは言えないにしろ吉野と仲がいいため、何とか浮かずに済んでいる。
それがいい事かは別として
僕?当然行きませんけど?
「え~、たまには一緒に食おうぜ~、染井ちゃん~」
「暑苦しい、僕の肩に触れるな、それに次に『ちゃん』付けで呼んだら殴るぞ」
吉野は本当に懲りない。
僕がどれだけ拒絶しても、無視しても構わずに僕に関わってくる。正直もうどうしたらいいかわからない。
こんな他人は初めてだ。
「いい加減学食に行ってこい、それにお前は早く食べて花壇の水やりをしてこい」
あれから美化委員会の活動は掃除のほかにも花壇の世話が始まった。植えるものは花を育てても面白くないというのと吉野の家が農家ということで人参を植えた。
しかし、野菜というのは育つ前は結構こまめに水やりをしないといけないらしく、朝の水やりは僕、昼は吉野、放課後は添木という当番で世話をすることになった。
「あ!!そうだった!急いで食ってくるわ!」
そう言って、吉野は急いで他のクラスメイトのもとへ駆けて行った。
「じゃ、俺も行ってくるわ」
そう言って添木も吉野の後に続いて教室を出て行った。
やっと二人がいなくなったので改めて僕は弁当を食べ始める。
聞こえるのは少ししょっぱい野菜炒めの租借音と遠くから聞こえる他人の声。
そして5月特有の心地の良い風が木の葉を揺らしながら僕を通り抜けていく音だけ
ああ、これが僕の日常だ。いつも通りの僕の日常だ。
でもどうして
どうして「静かだ」と感じるのだろう。
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