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第12話 芽吹く季節(2)
「染井!?お前大丈夫か!?すげぇ顔色悪いぞ!!」
「よし・・・・・・の」
なんでお前が
ダメだ。急に身体の力が抜けていく。
「そ・・・・・・めい!・・・・・・い!だい・・・・・・ぶか!!」
声が遠くなっていく
視界が隅からどんどん黒くなっていく
そうしてそのまま僕は意識を手放した。
暗闇の中に僕はいる。
周りには何もない。何も見えない。
身動きが取れない。身体が冷たい泥に囚われているからだ。
冷たい・・・・・・
寒い・・・・・・
抜け出そうとするとどんどん泥に埋もれていく。
ああ、僕はここで死ぬんだ。
終わるんだ。
夕闇に染まる部屋の片隅。寝そべる僕を見下ろす無表情で冷たい目。
・・・・・・僕は知っている。「終わる」感覚を知っている。
嫌だ。嫌だ。いやだいやだいやだいやだいやだ!!
誰か助けて!誰か!誰か!
誰か!!
・・・・・・誰だ?
僕の周りに誰かいるか?
いや誰もいない
僕が遠ざけたから
僕を助ける他人なんて
誰も
・・・・・・ああそうか
人は一人では助からないんだ
そうだったんだ
そんな当たり前のことに今更気づいてしまった自分自身の滑稽際に馬鹿らしくなって涙を流して嗤う
もはやもがくことをやめた僕を冷たい泥は無情に飲み込んでいく。
ああ、僕は助からない。
僕のせいで助からない。
因果応報だ。自縄自縛だ。
こんなことなら、せめて
せめて僕に「静かさ」を教えたあの二人には悪態をついておけばよかったな
そう思い、何もない空間へ伸ばした手
その手を温かい何かが掴んだ
僕はそれにすがるように、もう片方の手も差し出した
その時、さっきまで冷たかった泥が温かくなり僕を包んだ
ああ、温かい。・・・・・・気持ちいい
この温かさは何だろう。どこか懐かしい
どこか・・・・・・寂しい
目を開ける
視界はぼやけ、瞼が重い
思考がまとまらない
眠い
暗い
・・・・・・温かい
寝返りを打つと僕の唇に温かい風が当たった
目を少し開けてみると、そこには吉野の顔があった
なんで吉野が横に寝てるんだ
夢かな?まぁいいや
今はどうでもいい
ただこの温かさを求めて僕は吉野の胸に顔をうずめた
ああ、温かい。
僕はそのまま、また深い眠りについた。
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