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第13話 芽吹く季節(3)
「染井?あの・・・・・・染井さん?」
心地よい温かさの中から、誰かの声で目を覚ます。
誰かが僕を軽く揺する。
誰だ。いや誰でもいい。
もう少しだけこの温かさに包まっていたい。
「ちょっと・・・・・・あのそろそろ限界なんですが」
「・・・・・・」
「しゃーない。染井、ちょっと揺れるけど我慢な」
あぁ、僕の腕の中から温かさが逃げていってしまう。
僕は逃げる熱を追いかけるように、腕をまとわりつかせる。
「うわぁっ!」
「ん・・・・・・んー」
「ちょっ、この体制はまずいって!そ、染井!?染井さん?お、起きてください!」
霞かかった頭がようやく少しずつクリアになってきた。
この声は吉野の声だ。
「う、うーん・・・・・・よひ・・・・・・の?」
「お、おう。おはよう・・・・・・」
霞む視界いっぱいに吉野がいる。
「と、とりあえずなんだけどさ、腕解いてくんね?」
「ぁあ・・・・・・うん」
吉野の首に絡みついた腕をそっと解くと、吉野はゆっくりと離れていく。
ああ、さっき見た夢の性だろうか。
離れていく吉野の熱が
少しだけ
ほんの少しだけ
愛おしく思ってしまった。
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