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第14話 芽吹く季節(4)
吉野がトイレに席を外してから少しすると、熱に浮かされた僕の思考がようやく平静さを取り戻してきた。
そして、取り戻した冷静さと引き換えにとんでもない羞恥心が僕を襲った。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
取り返しのつかないことをしてしまったああああああああああああ
あの!吉野に!!
倒れたところを助けられたどころか!一緒にベットで寝て!!あまつさえ離れる吉野を抱きしめて引き留めるなんて!!!
最悪だ!羞恥心で顔から火が出る!!
穴があったら入りたい!むしろ穴になりたい!!
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ・・・・・・
しかしまぁ、冷静に考えてみれば今日のことは冗談ではなく本当に危なかったと思う。
もしあのまま、吉野が来なかったら・・・・・・
そんな想像をするだけで怖気が走った。
何はともあれ、吉野は僕にとっての命の恩人・・・・・・ということになってしまったのではないだろうか。
まぁ、命の恩人は言い過ぎかもしれないが、恩人ということには変わりないだろう。
そんな恩人を迎えるにあたってずっと寝たままというのも失礼だと思った僕は、ゆっくりと上半身をベットからもたげる。
よし。まだ頭痛は残っているものの先刻よりもずっと体調は良くなっている。
身体も心なしかお風呂に入ったかのようにすっきりしている。
少しするとトイレの水洗音が聞こえてきた。
「・・・・・・」
トイレから帰ってきた吉野は気まずそうに僕から顔を背け、ベットを背もたれにしながら座り込んだ。
僕も、そんな吉野になんて声を掛けたらいいか分からず、僕と吉野の間に暫く沈黙が流れた。
月明りでしか照らされていないマンションの一室
換気のために開けられた窓から6月の湿った空気が優しく吹き付ける。
そんな状態が少し続いた後、初めに口を開いたのはやっぱり吉野だった。
「・・・・・・染井、体調は大丈夫か?」
「あぁ・・・・・・うん、だいぶ楽になった」
「そうか・・・・・・」
「・・・・・・」
また沈黙が流れ始めてしまった。
ダメだ。曲がりなりにも助けてもらった恩人に何も言わないのは非常識だ。
「あのさ、吉野・・・・・・今日はその・・・・・・」
「すまん!!」
他人に感謝の言葉を述べたことのない僕が何も言えずにいると急に吉野が僕に謝ってきた。
「え?な、なに?」
いつになく真剣な吉野がまっすぐ僕を見る。
「お前の裸見ちまった!!」
はい?
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