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第15話 芽吹く季節(5)
「いや!わざとじゃないっていうか、その・・・・・・汗で!いや、汗かきっぱなしのままだと身体に悪いと思ってさ!着替えさせてやろうと思ったんだけど、染井下着までびっしょりだったからさ!だから、その・・・・・・勝手に下着を脱がせて着替えさせた」
「は、はぁ・・・・・・」
「・・・・・・怒ったか?」
「いや、別に・・・・・・」
大体、僕が倒れたのが原因だし、それに
「男同士なんだし見られてもなんとも思わない」
「そ、そっか・・・・・・そうだよな。わりぃ変なこと言った」
「それはそうと吉野、今日はその・・・・・・助かった。だからその・・・・・・あり、がとう・・・・・・ございました」
い、言えた。途中途切れたりしたがきちんと伝わっただろうか。
「ん?ああどういたしまして!っていうかびっくりしたぜ~染井いきなり倒れるんだもんよ~。今度からひどくなる前に病院行けよな~」
「それは・・・・・・っというかどうして吉野が僕の家に来たんだ?」
「そこ今更気にするのかよ」
カラカラと笑って吉野はあっけらかんと僕の問いに答えた。
「先生が吉野の家にお見舞いに行くって聞いたからさ、同行させてくれって頼み込んだんだ。そしたら急に先生が行けなくなってな、それで俺だけ来たってわけ」
そういえば担任がお見舞いに行くって言ってたっけ、というか個人情報がこんなに簡単に流出するなんてな現代社会であり得るのか。
「あっ!やっべもうこんな時間じゃん!終電なくなっちまう!!」
時計を見るともう9時を回っていた。結構な時間僕は眠っていたらしい
吉野は手早く荷物をまとめて玄関に向かおうとした。
その時吉野のケータイから着信音が流れ始めた。
「あ、やべ!母ちゃんからだ」
どうやら吉野の母親から電話が来たらしい。
「もしもし、・・・・・・今?学校の近くだけど・・・・・・うん、うん・・・・・・え!?」
?何かあったんだろうか
「うん・・・・・・またかけなおすわ」
「吉野?何かあったのか?」
「あぁいや、大雨の影響で川が氾濫して電車が止まってるらしい・・・・・・」
なんだって?
「どうすっかなぁ今日・・・・・・駅近くにある漫喫にでも泊まるかなぁ・・・・・・」
「・・・・・・」
僕は少しの間考え、そして意を決した。
これは恩返しだ。吉野に恩を着せたままだと今後の学校生活に何らかの支障をきたしかねない。だから速攻で恩を返してやる。そうだから
「うちに泊まっていけば」
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