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金は何も生まない②

 おじさんは今、俺の部屋に居る。明け方、病院から帰ってきて何故か、おじさんが付いてきた。行く所がないとか言うもんだから、部屋に入れてしまったけれど、俺はおじさんには興味ない。 「それで、これからどうしたいの?」  俺はベッドに座って、床に座るおじさんに尋ねた。重症かと思ったら、腕を刺されていて、命に別状はなかったし。当分右腕は使えそうにないけど。 「お風呂に入るのを手伝ってくれないかな?消毒薬のに匂いがキツくて」  照れ臭そうに笑うおじさんは一体、何を考えているのだろうか。そういうことじゃない、と思ったけれど、どうにも放っておけず、俺はおじさんを風呂に入れることにした。明け方で眠いっていうのに。 「服、脱がすから、こっち向いて」  狭い脱衣所におじさんを突っ込んで、こちらを向かせた。元々着ていたスーツは病院でハサミで切られてしまったため、おじさんは俺の上着を着ていた。その下は何も着ていない。 「なんだか、恥ずかしいな」 「自分で言ったんだろ?安心しなよ、俺、おじさんに興味ないから」  とは言ったものの、おじさんは鍛えているようで、良い筋肉の付き方をしていた。まあ、これ以上、会話を広げようとは思わないけど。 「君の恋愛対象は男?女?」 「あんたに関係ないだろ?」  どきりとして、俺はおじさんから目を離した。どうして名前も知らないおじさんに、そんなことを話さなければならないのか。 「あんた、なんで男に刺された時、礼言ってたの?」  恋愛なんて話から離れたくて、俺は無理やり話題を変えた。包帯を巻いた腕にビニール袋をかけてやる。 「人生に飽きてね、死にたいと思ったんだよ。そしたら、丁度、あそこに包丁を持った人間が居たから────」 「ふざけんな!!人に迷惑かけるような死に方選ぶんじゃねえよ!!死ぬんだったら自分で勝手に死ね!!」  思わず怒鳴ってしまった。だって、電車に飛び込んで死ぬやつなんて家族意外にも迷惑をかけるじゃんか。そういうのって、凄くムカつくんだよ。 「君は……」  おじさんは驚いたような顔で固まって言葉を失っていた。俺だって、こんな風に怒ったのは久しぶりだよ。あいつにだって怒ったことはない。 「なんだよ?言いたいことがあるんなら言えよ」 「君は、私のことを怒ってくれるんだね」 「は?あんた怒られたことないのか?」 「もう何年もないね」 「あ、そ」  俺が頭や身体を洗ってやっている間、おじさんは、ずっと何度も「そうか。ああ、そうか」と呟いていた。

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