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金は何も生まない④
◆ ◆ ◆
「……んっ、あんた」
ローションでぬるつく指が、不器用に内壁を這う。うつ伏せにされ、腰を高くした状態で後ろを慣らされている。それも利き手ではない左手で内部を探られていて、ひどくもどかしく感じた。
「なんで、こんな腕で君を抱こうと思ったかって?自分の気持ちには逆らえなくてね。君をとても抱きたいと思ったんだよ。嫉妬かもしれないね」
冷静な口調のくせに、言っていることに余裕は見られない。だって、誰かに取られる前に早く食っちまおうと思ったってことだろ?俺に残った、見たこともない誰かの跡を消そうとしてるんだろう?
「う、く……っ」
話しながらも不器用な左手は俺の弱い部分を見つけ出した。身体の中で指が蠢き、何度も同じ部分をグリグリと刺激してくる。堪えられるものなら堪えたいが、どうしても、腰がビクビクと反応してしまう。刺激は熱に変わり、逃げ場を探して腰に集まってくる。
「私は、とても君が好きだ」
「……ぁ」
後ろから耳元で甘く囁かれた。こんな声音も出せるのかと思うほど、その声は低く掠れ艶やかだった。声音が刺激に変わるなんて知らなかった。まるで、耳から犯されているようだと思った。
「入れていいかな?」
熱いモノが後ろにあてがわれた。余裕がないのか、ただ焦らしているだけなのか、俺の後ろに先走りを塗りつけるように屹立を動かしている。自分からは見えないけれど、きっと自分のモノも固く張り詰めているだろう。本当は、もうこのもどかしい熱から解放されたい。
「聞くなっ、んん!」
何も言わずに腰を進められ、不意打ちで出そうになった自分のものじゃないような嬌声を俺は顔を枕に埋めて抑えた。 この感覚は初めてではない。それでも、この圧迫感には慣れない。
「全部、入ったよ。ごめんね、苦しいよね」
優しい手が俺の背中を撫でる。でも、なんだか様子がおかしい。最初は掌で撫でていたはずなのに、いつの間にか、それは一本の指に変わり、俺の背骨をツツっとなぞり始めた。
「……っ、それ、やめっ……」
ゾクゾクと背筋が慄く。瞬間、感覚が無防備になった気がした。それに気付いたのか、意図的にやったのか、不器用な左腕が俺の腰をぐっとホールドして律動のペースを上げ始めた。
「く……ぁ…あ……っ」
中を激しく擦られ、背筋が仰け反り、枕で抑えていた声が洩れ始める。分かっていても、もう抑えられない。
「んぁっ……!」
突然、勢い良く屹立を引き抜かれ、身体を仰向けにされた。片腕でも力はあるようで、容易く転がされてしまったのだ。
「イキそうかな?私は、全然足りないけどね」
余裕のない熱い眼差しと視線が合致する。気恥ずかしくなって、目を瞑ろうとしたけれど、それは叶わなかった。
「あっ……、くっ!」
急に屹立を押し込まれ、しかも今まで触れられなかった前にまで手が伸びてきたのだ。ダイレクトに刺激を与えられ、俺の身体は勝手に打ち上げられた魚のようにビクビクと腰を跳ねさせた。
「君は感度が良いんだね」
「っるさい……、ん、んんっ!」
片腕で器用に身体を支えながら、おじさんは俺の唇を深いキスで塞いだ。隙間から滑り込んできた舌が歯列の裏をなぞる。
「ん、んんッ!んっ!」
────こんな感覚……っ、知らないっ!
舌を絡め取られ、律動を上げられた俺は未知の快感の波に襲われ、いつの間にか一人で果ててしまっていた。もしかすると、一瞬、意識を手放してしまっていたかもしれない。
「はっ……、えっ、ちょっ!」
やっと解放された唇で荒れた息を整えていると、急に右足を引っ張られ、身体を引き寄せられた。ガッチリと足を掴まれていて逃げられない。
「私は、まだまだ足りないよ」
「……ぅあっ」
抜けてしまった屹立を俺の中にゆっくりと埋めながら、おじさんはニッコリと笑った。
今日、初めて、本当に好きな人を目の前にすると人は余裕が無くなるってことを知った。
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