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【問1】(4)

形だけは俺の許可を求めている口調だが、ここまで何ひとつ、俺は許可などしていない。 案の定、小鳥遊は返事など待たず、片手で器用に俺のベルトのバックルを外してしまった。あっという間だった。 「ひっ……、やめ、やめろ! マジでっ」 大声を出すことも憚られ、拒絶の言葉を繰り返すばかりの口を再び塞がれた。 今度は唇ごと食べるように覆い尽くされる。 同時にスラックスの中に侵入してきた手が直接性器に触れて、悲鳴じみた引きつった声さえ、小鳥遊に飲み込まれた。 「……っ、ん、ふっ……!」 握った幹をやわやわと上下に扱かれる。反応なんてしていない、萎えたままだ。 しかし、高校生とはいえ男同士。触り方は的を射ていて、擽ったいような快感がじわじわと湧き上がってくる。 「んっ……、ぅあ……」 塞がれた唇から吐息が漏れる。鼻にかかった声が混ざっているのを自覚して、瞬間的に死にたくなった。 頭の中で警鐘が響いている。 これ以上はマジで、レイプだ。性的暴行だ。 教師として、生徒にそんな犯罪を犯させるわけにはいかない。 「ん……せんせい、可愛い……」 キスを中断し息を継いだ小鳥遊が、うっとりとそんなことを囁いた。 どう考えてもアラサー男のちんこを触りながら言う台詞じゃない。 くっきり二重で睫毛の長い、どちらかといえばそれこそ可愛い系に分類されるであろう、小鳥遊の目元に朱が差している。 どうやら本当に俺に興奮しているらしい。 そして興奮のあまり隙が生じていたのが、俺にとっては唯一の救いだった。 「……か」 「え?」 いつの間にか緩んでいた右手の拘束も振りほどいて、両手を小鳥遊の肩に乗せる。まだ出来上がっていない身体の、厚みのない肩。 「可愛いわけあるかぁ!!」 油断している小鳥遊を、渾身の力で押しのけて自身から引き剥がし、壁との隙間からどうにか脱出する。 ずり落ちかけたスラックスを片手で掴むと、俺は小鳥遊を放って、そのまま夢中で教室を飛び出した。

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