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【問3】(3)
気を取り直して、咳払いをひとつ挟んでから、大きめに息を吸い込む。
「あのな、小鳥遊。よく聞いとけ」
手を伸ばして、栗色の髪のあいだに指を差し込むと、小鳥遊はびくっと身を固くした。
振り向かないままの背中に向かって、俺は語りかける。
「お前な。今度、誰かに告白するときは、もっと違う言い方にしろよ」
ふわふわの髪は見た目通りの手触りだった。指を滑らせて、くしゃりと混ぜるようにする。
「好きです、はいいけどな。あんなの、身体目当てなんだなって普通、思うだろ?」
俺は思わないよ。
お前がただの恋愛経験のないバカで、ただ俺のことが好きなだけの、バカ正直なバカだってわかったからな。
でも最初は思った。
「好きになった相手、傷つけたくなかったら、ああいう言い方はやめろよ。いきなりキスしたり触ったりすんのも、絶対ダメだぞ」
ちゃんと順番を守れ、犯罪だからな。
一言ずつ、子供に言い含めるように……内容はアレだけど。
小鳥遊は背中を硬直させたまま動かない。何も言わない。本当に拗ねた子供みたいだ。
少し俯いたその頭を、ぐしゃぐしゃと撫でつけてやる。
「わかったか?」と、数学の解説をしてやるときのように、わざと軽く言ってから手を離した。
せんせい、と立ち消えそうな声。洟をすする音も聞こえる。でもその肩は震えたりはしていなくて、やがて意を決したように小さく身動ぐ。
上半身だけで振り向いた小鳥遊は、泣いてはいなかった。
ただ泣いたあとのようにじんわり赤くなっただけの目元で、真っ直ぐに俺を見て、
「せんせい、だいすきです。俺と恋人になってください」
そう言った。
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