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第3話
朝食の準備を終えた希望がそぉっと寝室に戻ってきた気配で、ライは目覚める。希望が部屋から出る時も実は一度目覚めていたのだが、希望が逃げ出そうとする気配はなかったので放っておいた。今も、希望が近づく気配に気付いているが、目は開けない。こそこそと動いている希望が何をしようとしているのか興味があった。
もし悪戯でも仕掛けてこようものなら返り討ちにしてやる。そんな度胸ないだろうけど。
物騒なことを考えながら、ライは希望を放っておいた。すると突然、希望が身体をぴたっと密着させて、囁く。
「ラーイさん♡朝ごはんできましたよー♡起きて♡」
この上なく浮かれて、気持ちを押さえきれないような弾んだ甘ったるい声の後に、ちゅっと頬に柔らかな感触を感じ、ライはゆっくりと目を開けた。
ほぼ予想通りの満面の笑みで希望はニコニコとライを見つめている。
「……」
ライは黙って希望を見ていた。最愛の恋人を目の前にしている男のものとは思えないような冷たい眼差しである。
ライは、頬に当たった柔らかな唇の感触も、ライ以外が見たら思わず抱き締めてしまうであろう笑顔も、どうでもよかった。
「……お前、なにそれ」
「なにって?」
ライにくっついたまま、希望は首を傾げた。
希望はエプロンしか身に付けていなかった。いや、よく見たら下着は履いているけど、その上にはエプロンだけだ。腰と首に結ぶ為の紐が付いているだけのシンプルなエプロン。いわゆる裸エプロンだが、ライはAVやエロい創作物に理解のない男なのでそんな名称があって、比較的一般にも知られているコスチュームであることなど知る由もない。
そのエプロンは厚い生地ではないから、密着すると希望の大きめの胸とぷっくりとしている乳首の存在が布越しでも分かる。エプロンの裾から覗く太股も、腕も、露出している肌という肌がしっとりと滑らかだ。鍛えられた筋肉の存在も感じるが、それを覆う皮膚はもちもちしてて柔らかい。白い肌には昨夜の情事の跡が散らされているのに、当の本人はライを見つめたまま、清純そうな顔でにこにこしている。
ライにはわからない。
これまで何度も希望本人に「エロい身体」と言ってやったし、隙を見せれば希望にその気がないのは承知の上で「誘ってんのか」と言って身体に触れた。希望自身に自分の身体が男を煽るような体つきをしていると自覚させ、意識させて辱しめたいから、何度も何度も犯して思い知らせたつもりなのだが。何故まだこんな姿で、無防備にくっついてくるのだろうか。ライには全く理解できない。
どういう神経してんだこのバカ。なんなのこいつ、ヤっていいってこと?
ライは希望の腕を掴んでベッドに引きずり込んだ。組み敷かれた希望はきょとんとした顔でライを見上げている。ライに首筋に噛みつかれて、慌てて押し返した。
「えっ、なんで? あっ、待って……だめっ……やっ……!」
だめ、だめ、と繰り返しながらも希望は強く拒もうとはしない。瞳を潤ませて、ライの愛撫に身体を火照らせる。下着は早々に脱がされて放り投げられてしまったから、エプロンの下で主張しているものもよく分かる。ライはそこには触れずに、その下へ手を伸ばして、丸く形のよい尻を揉む。外側から内側へ、尻の肉の間に隠されている蕾に触れるとくにくにと柔らかかった。
「……なんで準備してんの?」
「ふぇ……?」
希望はライの荒々しい愛撫にとろんとした表情をしていたが、一瞬遅れて真っ赤になる。
「えっ?! 違う違う! 朝、シャワー浴びた時に中も洗ったから……!」
「へぇ、どうだか」
それまで無表情だったライが、はっ、と鼻で笑う。恋人の顔の良さに希望の胸がキュンとときめいたが、負けじと睨んだ。
「昨日ライさんが中に出したから……っ、……ぁあっ! ま、ってっ! だめぇっ、やっ……! ぅんんっ!!」
希望が抗議しようとした途端、一気に奥まで貫かれてしまった。突然の衝撃に一瞬息が止まる。身体を仰け反らせてガクガク震えるが、希望の意に反してきゅんきゅんと締め付けてしまう。
「はっ、はっ……! ……ふぁっ、ぅぅ……んっ……!」
「あ、ほんとだ。中きっつ」
「~~っ……!! もぉっ……! ぁっ! やっ、まだだめぇっ……ぁあっ! あんっ!」
そのまま慣らすようにゆっくり揺さぶられて、希望は反論もできないまま、甘い声で鳴いた。
ライはエプロンが邪魔だなと思いながらも、外すのが面倒でエプロンの両脇から手を突っ込んで胸を揉み、乳首を搾るように強めにぎゅうぎゅうと摘まむ。
「あんっ、あっ、やだぁっ、いた……っ、んぁっ、はぁっ……ぁっ! ぁっ、ぁあ……っ!」
最初は痛みで身体を強張らせていたが、ライが手の力を緩めて指で先を擦ると、甘い刺激に身体を震わせる。拒むような言葉もなくなって、代わりにビクビクと身体が震えるのと合わせて、ライを受け入れている中も締め付けた。
「あっ、あぁ……っ、んっ、はぁっ、ぁんっ……あっ、ライさんっ……ぁあっ……!」
半ば強引に抱いても感じて、希望はさらにライを求めるように腕を伸ばす。ライもそれを受け入れると希望がしがみついて、ライの腰に足を絡ませた。
以前までの耐えるように抱かれていた希望と比べれれば、ずいぶん素直になったものだ。素直になりすぎたのか、または調子に乗っているのか、時折先程のようなライが理解できない行動が増えたことが玉に瑕だが。
それでもこんな扇情的な姿を見ると、可愛がってやってもいいかなと、少しだけ思わないこともない。
ライが自分の首に回された希望の腕を引き剥がす。希望が「あっ……」と悲しそうに声をあげたが、ライはそのまま希望の手首を掴んでベッドに押し付ける。さらに身体を密着させて、希望の身体ごと押さえ込んだ。
「ぇっ……あっ?! あぁっ! やっ……! んっ……ァアッ!」
腰を引くことも、仰け反って快感を逃がすこともできずに、何度も奥を抉られて、希望の頭の中が真っ白になった。ばちゅ、ばちゅ、と結合部の濡れた音と肌と肌がぶつかる音があまりにも卑猥で耳を塞ぎたくなるがそれもできない。
ライの屈強な身体に押し潰されそうなほど強く抑え込まれ、身動きひとつできずに快感を叩き込まれる。それでも。
ああっ、どうしようっ……!
これ、好きっ……好き……っ!
抑え込まれて犯されるこの体位が、ではなくて。
互いの掌を合わせて、指を交互に絡ませたこの手の繋ぎ方が。いわゆる恋人繋ぎがたまらなく好きだった。そんな可愛らしい名称があることなどライは知らないだろうし、彼にとって特に意味のあることでもないのはわかっている。それでもいい。これだけでもう何されても受け入れてしまうし、与えられる刺激全てが快感に変わっていく。きゅうきゅうと締め付けて彼を離さない。
「あぁっ……ライ、さっ……んぅ! も、もうだめぇ……っ……! やぁ、っあぁ! んっ、あっ……あぁっ! ――――っ……!!」
大きく身体を震わせて達し、身体の奥に注ぎ込まれた熱も飲み込んだ。
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