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第5話

それから幾日か経った、とある朝。希望は暑さと重さで目が覚めた。何か力強く逞しいものに捕まっていて身動きできない。 「んっ、んぅ……、ぅぅっ……?」  夢と現実の狭間からゆっくり意識が浮上して、目を開ける。 「んー? ……ん……?!」  目の前には恋人の厚い胸板があり、逞しく太い腕の中にいた。頭を抱え込んで胸に押し付けるように抱き寄せ、反対の腕は腰に回している。  一瞬、希望の頭の中が空っぽになった。空っぽになった頭で一生懸命考える。おっぱいかたい。えっちで、いいにおい。いや、違う違う、そうじゃない。  抱き締められている。俺が、ライさんに。    えぇ~~~? なにごと~~~?    昨夜は風呂に入った後、ライがリビングのソファで仕事してるのを隣で見てた。…というところまでしか記憶がないので寝てしまったんだろう。その後、ライがベッドまで運んでくれたということになる。そして、これだ。    もぉ♡ライさんったら♡起こせばいいのに♡超好き♡    希望は腕の中で、一人でデレデレしている。  平然とこういうことするからこの男は女が途切れないのだ。あ、男もか。全くもって恐ろしい。もういっそ怖い。こうして喜んでしまう自分のチョロさも怖い。  希望はしばらくそのままライの腕の中で大人しくしていた。もぞもぞ動いて起こしてしまうのはもったいない気がする。このLOVEな感じを堪能せねば。次に抱き締めて貰えるのはいつになるのかわからない。けれど、少しして希望はそっと抜け出した。ふぅ、と一息ついてベッドを降りる。  なんだか照れてしまった。片想いの期間が長くて、エッチもしてないのに触れ合うというのにまだ慣れていない。  それに、今日の気温は暖かいし、ライの体温は希望よりも高いので腕の中が熱かった。ライに触れられると火傷しそうだ、と希望はいつも思う。しっとり汗ばんだ肌にシャツが張り付くのでぱたぱたと扇いだ。  シャワーを浴びて、着替えてリビングで待ってみたがライは起きて来ない。  珍しい。あんな体力無尽蔵の化け物みたいな人でも疲れるのかな。何時まで仕事してたんだろう。チューして起こしにいきたいけど、前にやったらなんか不機嫌になったからやめとこう。でも、ぎゅうっとして、ちゅっとしたい。  リビングで大人しく待っていたが、起こしにいきたくてうずうずしてくる。  あ、そうだ。アイスでも買ってこよう。ちょっと熱かったし、心を落ち着ける為にも冷たくて甘いものが必要だ。そうしよう。  ライのマンションから、歩いて五分もかからないところにコンビニがあった。戻る頃にはライも起きているかもしれない。思い付いた希望はサッと上着を羽織って部屋を出た。

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