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炎狼の快楽 4
キスをする。何度も角度を変えて舌を絡め、口内を嬲る。乳首を弄り、下肢を撫でる。レイスの吐息に熱が混じる。
焦ったそうにレイスが身をよじる中、ヴァルディースはレイスの熱の中心に、自分の感覚を重ねようとした。ただ、どのくらい同調させればいいのかはまったくわからない。
下手をすれば以前のようにレイスの感覚で乗っ取られてしまう。それでは意味がない。
だから用心して少しずつ。最初はじわりと熱が伝わってくるような感じだった。レイスに触れるところからレイスの熱が伝わってきて、それがじわじわとヴァルディースの奥に溜まっていく。ヴァルディースが熱い、と感じたことは、正確な意味ではない。なにせ火に属する存在。熱など一番身近にある。
「ヴァル、ま、だ、かよ……ッ」
レイスが腰を浮かせ、きつくシーツを握りしめて震えた。
そういえばレイスの快楽に慣れるため、少しだけレイスには我慢してもらっていたのだ。
「ああ、悪い。もう少し……」
待ってくれ、と言いかけて、どくりと大きく何かがヴァルディースの中で脈打った。
潤んだ目がヴァルディースを睨みつけた。
忙しなく吐き出されるレイスの吐息。肌は朱に染まり、自ら開いた脚の間では先走りの蜜が屹立した中心から溢れて、昂ぶり、震えている。後ろの口は既に濡れそぼち、物欲しそうにひくひくと震えていた。
そしてそれを見つめるヴァルディースに気づくと、恥ずかしそうに顔を背け、無防備にうなじを晒す。
何か雫がヴァルディースの額から顎を伝って滴り落ちた。それが汗だと気づく間も無く、ヴァルディースはレイスを強引に抱き寄せ、朱に染まった頸に噛みつき、その奥に自身を突き入れていた。
「あ、アァッ!」
嬌声が響いた。何度も聞いたレイスの喘ぎ声だ。しかしいつもより声が高かった。そしていつもより、そのレイスの声が愛しかった。
だがそんなことはどうでもよくなるような激しい感覚が、その時ヴァルディースを襲った。
「な、ヴァル……! んぁっ」
レイスのナカに入り込んだ自身が熱い。途方もなく熱い。喉が渇くような飢え。熱が激しいうねりと共にヴァルディースの奥からも迫り上がる。
レイスが腕の中で激しく揺さぶられている。目から涙が溢れ落ちる。それが甘い蜜のように思えて、夢中でヴァルディースはそれを舐めとり、唇を貪った。
「アッ、ヴァル……、ヴァルディース、激し……、あぁーーっ」
ガクガクと身体を強張らせてレイスは果てる。けれどヴァルディースを襲う熱はおさまらない。どうしようもなく激しい衝動が、ヴァルディースを突き動かし、レイスを求めた。
「レイ……、レイスっ」
うわ言のようにレイスの名を呼び、きつく抱きしめる。わけのわからない何かが迫り来る。思考が飛ぶ。何も考えられない。ただただ熱くて、レイスを喰らい尽くしたくてたまらない。
欲求がヴァルディースの意識を押し潰した。抗いがたいうねりに任せるまま、繰り返し熱を吐き出し、ヴァルディースはレイスに叩きつけた。
「ぁ……」
声も枯れ果てたレイスの首が、がくりと後ろに傾いた。それでヴァルディースはようやく我を取り戻した。
妙な開放感と心地よい疲労感で満たされていた。
一体自分が何をしていたのか、理解が追いつかない。何度も奥から迫り上がる熱に突き動かされ、レイスにそれを叩きつけていた気がする。
そのたびにレイスが泣き叫ぶほどに喘ぎ、激しく痙攣して果てた。そんな気はするのに、記憶は曖昧だ。
「俺は、一体……」
身を起こそうとして、べたついた不快な感触が身体の前面に広がっていることに気づき、顔をしかめる。しかし、そこにあったものを目にした途端、血の気が下がった。
抱きしめていたレイスが、焦点の合わない目でぐったりと身を投げ出していた。身体はどこもかしこも汗と白濁した汁に塗れていないところはないという有様で、指先一つ動かない。
「レ……レイ、しっかりしてくれ!」
慌てて頰を叩き、レイスを起こす。途端にひゅっと喉を鳴らして、レイスはむせかえった。背中をさすってやろうとしたのだが、強く首を振られ、拒絶される。呼吸がようやく落ち着くと、ろくに動かない身体で、レイスはヴァルディースをきつく睨みつけた。
「バ、カ、やろぉ……。おま、やり、すぎ……ッ」
潤んだ瞳から、朱に染まった頰に涙が落ちた。
「すまん、レイ……。だが、その……」
白濁液にまみれた身体はひくひくと震えていて、目のやり場に困る。声は掠れて力はないどころか、熱っぽい吐息交じりでは罵倒なんだか喘ぎなんだかわからない。
ムラムラと、また熱がヴァルディースの奥から迫り上がっていた。
ヴァルディースは必死に理性を取り戻そうとした。しかし一度繋いでしまった感覚を、今この状況下で切り離すのは、ヴァルディースには至難だった。
「もう一回抱かせてくれ」
「!? むりっ、もぉむり、だ、からぁ……!」
ヴァルディースはそのレイスの拒否を聞くことができなかった。逃げようとしても身体が動かないレイスを抱き寄せ、熟れた果実のようになったレイスの中に、もう一度自身を突き入れた。
そうして結局もう一度レイスが気絶するまで、ヴァルディースはひたすらレイスの身体を貪り尽くした。
翌朝、ヴァルディースは寝台上で全く身動きできなくなったレイスに激しく罵倒されて、長い人生の中で初めて土下座というものを体験した。まさか人間の快感というものがここまでの破壊力を持っていたとは思いもしなかった。
もう二度とレイスと快楽を共有したりはするまいと、ヴァルディースは誓ったのだが。
「……たまにだったら、いいぞ」
と予想外のレイスの返答が返ってきた。
さらには、「気持ちよかったし、ヴァルディースが求めてくれて嬉しかった」と、うっかりレイスが心の中で呟いてしまったことを、たまたま読むつもりはなかったのに拾ってしまって、ヴァルディースは複雑な思いに駆られた。
ある意味快感の共有はうまくいったのだろうか。確かにヴァルディースとしても経験したことのない快楽というのはとてもよいものではあったのだが。
しかしもし次にやることがあるとするなら、もう少し同調率を下げようと、ヴァルディースは切に思った。
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