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五話め

放課後、帰り支度をしていると翔来が声をかけてきた。 「稜、今日から二週間、一緒に帰ろうな」 「二週間?」 「おう。テスト週間入るからって部活ないじゃんか」 「…あ、そっか。なかったわ」 そういえばそうだった。この中学はテストの二週間前から全部活動が活動禁止にさせられて、勉強しなくてはいけない。といってもみんな遊んでるだろうけど。 「忘れてたのかよ」と翔来に頭をぐりぐりされて、俺は放課後だけど元気マックスになった。 翔来が隣にいる帰り道が久しぶりで柄にもなくルンルンしている。 「稜と帰んの久々だな、前のテストから三ヶ月くらい空いたか」 「ん〜、そうかも」 翔来も同じことを考えていたみたいで嬉しい。俺、顔緩んでないかな。 それなりの距離感で歩いてるわけだけど、本当はその手を握りたい。恋人繋ぎとか、したい。でも、無理だよなあ…。俺が女だったら希望があったかもしれないけど。 「あ、」 翔来がぽつりと呟いて、横を見ようとしたら思い切り肩を抱かれた。そして引き寄せられ、翔来の胸板が目の前に現れた。 ………状況把握が追いつかん 「ほら、水かけられるとこだった」 ブーンという車の音をようやく耳が捉えた。それに翔来の声が聞こえるけど、俺は若干パニックで心臓バクバクだ。 「稜?」 「ぁ、待っ、」 顔を覗き込まれて、ますます恥ずかしくて、赤くなるのを抑えられない。 何だよもう。急過ぎる。こんなのどう言い訳すんのか分かんねえよ… 「…稜、」 呼ばれて視線をあげると、さっきの寝起きの時みたいに緩んだ顔をしてる翔来。その顔だめ…かっこいい… 俺にそんな顔見せちゃ駄目だよ。そういうのは、好きな子に見せなきゃ。まだいないかもだけどさ、高校進学したら、どうせもっとモテるんだし、高校では女の子と付き合うんだろうな。頭のレベル的に高校は離れ離れだし、固定された隣がいなくなるんだからみんなもっともっとグイグイ来るんだよ。翔来は性格もかっこいいから地味な子だって、イケイケな子だって、みんな翔来の虜だよ。ね?だから俺にそんな顔見せないで、 「稜、キスでもすっか?んー」 「しねーよ!」 ふざけて唇を突き出されて、翔来のおでこを叩いたけど、そういうタチの悪いのはやめてほしい。勘違いしちゃいそう。

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