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八話め
この土日、ひたすらドキドキしていた。
(翔来がキスなんてするから!)
金曜日の、でこちゅーが忘れられなくて行き場のないこの胸の苦しさを、枕を抱きしめてごろごろしてどうにかやり過ごした。
しかもさ、あのかっこいい声で『可愛いな、稜』だって!あれに惚れない奴なんているのかよっ!もう、好き!
思い出すだけで体が熱いし、またして欲しいし、でも期待させないでほしい。いろんな感情が綯い交ぜになって訳分からなくなる…。
こんなにも振り回して、罪な男だな。
学校に着くと丁度朝練を終えた翔来と下駄箱で会った。
(うわうわ、汗かいてるっ、えろい…!)
俺が内心興奮してるのも知らず、翔来は挨拶と同時に頭をぐしゃっとしてきた。眩しい。
「稜、」
翔来が何かを言いかけた時に後ろから来てたサッカー部の連中が絡んできた。
「あ〜っ!噂の稜くん!おはよ〜旦那のお迎え?」
「旦那…!?」
素で反応して真っ赤になった俺を面白がってさらにみんなでからかってくる。つか翔来まで一緒に笑うなよ!
ひとしきり旦那いじりされて、予鈴がなると翔来が俺の肩を抱いて「じゃ、俺ら行くわ、お前らも早く可愛い奥さんゲットしろよ」とこめかみにキスされた。もう俺は限界で頭から白い湯気が出た気がする。
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