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九話め

可愛い奥さん、可愛い奥さん、可愛い…奥さん…… ボフンッと脳が爆発した。 授業中なのにまったく内容が入ってこなくて、朝のおふざけ発言と唇の感触が忘れられない。 受験生だってのに勉強が手つかずでやばいという自覚はあるが、どうしようも出来ない。最近の翔来は何故か距離感が近くて、そっちばかり意識してしまう。 おでこ、こみかみ、、翔来にキスされたとこをそっと触って思い出す。そしてにやける。その繰り返しだ。 みんな気にしてる感じもないし、翔来の中ではふざけてるだけだろうし、俺だけ盛り上がってんだな。恥ずかしい…。 授業終了のチャイムが鳴り、もう終わりかと慌てて起立する。 やばい、本当に一時間何も入ってきてない。次はちゃんとしなきゃ。 パチパチと頬を叩いて気を引き締める。よし。勉強勉強。 昼休みに翔来と話していると、教室の外から翔来の名前が呼ばれた。……女の子…、また、告白か…… む、と唇を突き出してしまったが、すぐに戻す。俺だけの翔来じゃないんだ、いってらっしゃいって言わなきゃ。 「……稜?」 「あ、うん、女の子だな、また告白かよ〜!いってら!」 なるべく明るく送り出すと、翔来がなかなか動かない。ん?と俺も見つめ返すと翔来の目尻が下がった。 「すぐ戻ってくるよ、だから、手、離しても大丈夫だぞ」 「は…?」 何言ってんの?と思って自分の手を見たら見事に翔来のワイシャツを摘んでいた。 (うわあっ!何やってんだ俺!恥ずかし過ぎる!) わたわたと余計な動きを交えて手を離すと、またにっこり笑った翔来が頭をポンポンしてきた。……好き。

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