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十話め

翔来がいなくなると女子達が詰め寄ってきた。 「えっなになになに、怖いんだけど」 「稜くん!…あっと、稜くんなんて呼んだら怒られるよね、橋川くん!」 「う、うん」 「あの、ずばり!お付き合いをされてるんですか!?」 主語がなくて分からない。 誰のこと?と聞くとなんと俺と翔来だと言う。俺は思わずでかめの声で「は?」と言ってしまったが、すぐに真っ赤になる顔のせいで威力なんてものは無い。 「お、おお俺と翔来??」 「うん!毎日教室であんなにいちゃつかれたら、こっちが恥ずかしいんだよ〜」 「ほんとほんと。付き合ってるなら付き合ってるでただのカップルとしてスルー出来るんだけど、気になって仕方がないわけ!」 わかる!?と一斉に言われて椅子ごとひっくり返りそうになった。 「いや、あの、俺ら別に付き合ってるわけじゃなくて…」 「付き合ってない!!まじかよ!」 「ますます興味深くなっちゃったよ!」 「じゃあ何で翔来くんの目はあんなに甘いの!?」 「あ、甘い??」 甘いって何、どういうこと?ていうか女子の圧がすごすぎる。ちょっと怖くなってきたんだけど。 俺が聞き返したら女子の一人が翔来は俺を見る時だけ目が違うということを伝えてきた。…んなわけあるか、親友だから気許してるだけだろ。 「ちっがう!絶対違うよ!」 「えっ何この子鈍感なの?スーパー鈍感???」 「落ち着けって、向こうが好きとか有り得ないから」 俺がそう発すると女子達が静まり返った。 なに…急な沈黙も怖いよ…… 「ままままままって、」 「え?え?その言い方は?えー?」 「向こうがって、じゃあ橋川くんは?」 「好きじゃん、その言い方は好き決定」 勝手に盛り上がられて、にやにやされて、なんかよくわからないうちに応援された。 ふぉー!とか女子達が叫んでる中心に俺。…何これ? つか待って、俺、翔来のこと好きなのバレたの? 「……まじか、…無理、恥ずかしい……」 ぽそぽそと独りごちて顔を覆うと、なにやらそれも聞き取られたようで女子達の熱気が増した。 …早く帰ってきて、 それから三分くらいいろいろ聞かれたけど、顔から両手は離さないスタイルで答えられるとこだけ答えた。 「えっ何だよ、この状況」 やっと待ちわびた声が俺の耳に届いて、ばっと顔を上げる。女子が多過ぎて見えない。 「うわ〜うわ〜!ここに来ての登場!」 「もうこれからが楽しみ」 「旦那、さあさあどうぞ」 翔来も意味がわかってないみたいだが取り敢えず席に着いた。俺はじろっと隣を睨んで「すぐ戻るって言った…」と八つ当たりした。女子達がまたなんか言ってたけど翔来の「ごめんな?」からのなでなでで気分が良くなった。ちょろい奴。

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