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十三話め

脳からは期待するなって指示を出してるのに体はじんじん熱くなって、心臓はきゅっと縮こまったりしてる。 (い、一位取ってまで、伝えたいことって…) 頭の中で女子の声が響く。 『あれもう絶対好きでしょ』 『期待するなって方がおかしいよね』 『告白してみたら?』 「…な、ないないない!なんか相談だろ!絶対そう、うん、そう」 馬鹿みたいに頭を振って、女子の発言を飛ばす。 翔来はモテモテで女の子なんて選びたい放題なんだから、俺なんて選ばないって!期待するだけ無駄だぞ俺! 頬を軽く叩いて、リレーを目で追う。 (…あ、あれ、うちのクラス、三位?) アンカーまで間もないのに、三位という事実を目の当たりにしてしまった。 そんな、翔来が何を言いたかったのか分からないじゃん! 一人で焦ってると視線を感じて、きょろきょろすると翔来と目が合った。それだけでドッキンと跳ね上がる俺の心臓。翔来はそろそろ出番で、立ち上がるとまた俺の方を見ていつもより大人っぽく笑った。 (えっ何、かっこいい…!) 軽く体を動かしてからレーンに並んだ翔来はバトンが渡されるなり陸上部顔負けの走りを見せた。翔来の登場で校内がすごい歓声に包まれる。あっという間に二位の生徒を抜いて、あと半周で一人抜かせば一位になる。 距離的に無理か、と少し諦める生徒がいる中、俺は「翔来!早く走れ!」と無理な声援を飛ばした。もうすでに早く走ってる奴に早く走れってどんなだよ、と自分でツッコミながら翔来を見つめる。全力だったはずの翔来が更にスピードを上げ、最後の直線勝負で、見事一位を抜かして、ゴールテープを切った。 うちのクラスは当然テンションマックスだし、学校中の翔来ファンの歓声も加わり、凄い盛り上がりを見せた。まだ午前中なのにもう終盤のようだ。

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