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十四話め
退場してから俺は真っ先に翔来に近づいた。
「翔来っすごい!すごかった!」
「稜」
周りに翔来ファンが詰め寄る中、俺もテンションが上がってるあまり周りが見えなくて、いつもじゃ有り得ないのに、翔来の首に腕を回して抱きついた。
「翔来かっこいい!すっげ、早かった!」
「俺かっこよかった?」
「当たり前!きらきらしてた!」
俺の腰に翔来の腕が回されて、少し引き寄せられた。
「じゃあ俺頑張ったからさ、ほっぺにちゅーしてよ」
目元を緩めてそう言ってくる翔来の頬にチュッと唇を触れさせた。翔来はまさか俺が本当にすると思ってなかったみたいで少し赤くなった。
(可愛い…!)
堪らない気持ちになって、翔来の首元に顔を埋めると翔来は強く抱きしめてくれた。
「はいはいはい見世物じゃないです〜」
「一年生たちはもう待機すんじゃない?ほら、呼ばれてるし」
うちのクラスの女子が他学年の女子の間を抜けて近くまで来た。その声が聞こえた途端、冷静になってきて自分の行動が恥ずかしくなってきた。
(ほ、ほっぺにちゅーとか…よくできたな!!)
ばっと腕を離して、翔来から距離をとる。
「しょ、翔来も仕事、あるだろ!いってら!」
「…うん、頑張る」
「かっ…」
可愛い!!!
そんな唇むっとさせて不貞腐れたって何も出さないぞ!ぽんぽんするだけだぞ!
「いってらっしゃい」
高めにある頭を撫でてあげるとすっかり元気になった様子で、今度は翔来が俺のほっぺにちゅっとして走り去った。
…いちゃいちゃしすぎ、
席に戻ると女子達が口々にそう言ってくる。
「…だって、かっ、こよかったじゃん…」
どんどん小声になってく俺を女子達がにやにやと見てきた。お腹いっぱいです、と意味わからないことを言ってくるし、ほっぺちゅーの感想聞かれるしで、昼休みになるまでずっとからかわれた。
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