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十七話め
味なんて何も感じられなかったお昼を過ごして、いざ午後の部。
俺は全然身が入らなくて、一年生の100メートル走をただぼーっと見てるだけ。そんな俺を確認した女子達が俺を囲んだ。
「…何、キスでもしたの?」
「つ、ついに告白した!?」
「いや逆に告白されたとか?」
矢継ぎ早に質問される。取り敢えず頭を左右に振ると、女子達から落胆の声が漏れた。
「…ほっぺ」
「「「ほっぺ?」」」
俺は地面を見つめながら、ぽつりと話し始めた。昼休みの出来事を言うと、女子達はテンション高めに俺の背中を叩いてきた。
「知らない間にそんな進んでたの!?」
「進んだ…?」
「進みまくってるわ!」
「待ってよ待ってよ、どこの少女漫画」
うちのクラスだけ変な盛り上がりで多分他のクラスからの注目度一位だぞ。
女子達に何度も同じことを言わせられて、その都度顔が熱くなってしまうので、自分の両頬を軽く挟むと今度は翔来の手の感覚を思い出して更に赤くなるという無限ループ。
「てかもう100メートルだよ!!!」
「うはー!やば!ついに告白か!」
「いやまだ翔来一位取ってないし…」
「は?翔来くんが一位じゃないとか無いでしょ」
ぶった斬られた…。うん、まあ確かに俺もそう思ってるけどさ、
俺の心の準備が出来てない……
クラスリレーと同じ場所に集合して、整列して待機する。周りはリラックスしてて笑って話したりしてるけど、俺はドキドキ緊張して笑う余裕もない。
(うう〜…どうしよう、翔来、何を言ってくるんだろう…)
期待していい、って、言ってたけど、分からない。だって俺がしてる期待って、翔来が俺の事すき、てことだぞ…?それ分かって言ったのかな。えっでも待って。分かって言ってたら俺の気持ちバレてるってことじゃんか!無理無理無理、こんな恥ずかしいことねえって!
《三年生の入場です》
実行委員のアナウンスが入って小走りで入場する。俺は気持ちが纏まらないままその流れに着いて行った。
整列をして腰を下ろし、俺の横を見ると運動部はいないようでほっとする。個人でも一位を取ればその分点数が加算される為、文化部の俺としては大分安心だ。
(取り敢えず、全力で走って、それで…)
チラと後ろの翔来を見ると隣のクラスの奴と話していた。自分ばかりドキドキしてると知って、ちょっと悲しくなる。 のそのそと前に向き直り順番を待つ。
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