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十八話め
パン!とピストルが鳴らされてはゴールして、またすぐピストルが鳴らされて……すぐに俺の番が来てしまった。
(こんなにもドキドキしてるのに…)
レーンに立ってからもう一度翔来を見たら今度はこっちを見てた。目が合っただけで嬉しくなって、自分の顔が明るくなったのが分かる。グッドサインを送ってくれて、俺も笑顔で返す。俺ってほんと、もう…抜け出せないみたい。
「一位の方はこちらでーす」
実行委員の誘導に従い、1の旗が立てられてる列に並ぶ。周りが文化部だったおかげで何とか一位になることができた。腰を下ろして前にいたクラスメイトと一位を取れたことに喜びを分かち合う。
次々と生徒がゴールして俺の後ろにも列が出来た。俺はもうひたすらドキドキしていて、何度も翔来の方を見てしまう。
(あ、ああ〜もう次じゃん、…しかもみんな足速い奴らばっかだよ)
絶対翔来が一位だって信じてるけど、でも一位取ったら、何言われるのか不安だし、落ち着けない。クラウチングスタートの体勢をとった翔来たちがピストルの音と共に走り出した。さすが翔来。また歓声が凄い。他の生徒が少し可哀想だぞ。だが実際、走ってる翔来は本当にかっこよくて、もはや揺れてるハチマキすらかっこいい。
翔来たちはほぼみんな同じくらいのゴールだった。
近づいてきた実行委員に断りを入れたようで翔来は一人でこっちの列に向かって歩き出した。そして、迷うことなく俺のとこで足を止めた。ちょっと息を乱してる翔来が目の前にしゃがんで、笑顔を向けてくる。
「稜、一位、とった」
きつかったー、と笑う翔来に今日二度目のハグをかましてやった。女子達の声が凄まじい。ぎゅうううっと抱きしめると翔来が「あー、可愛い」と耳元で言ってきて、最高にキュンってなった。
「おめでとう!」
「これで学校公認だね!」
「めでたい、めでたいよ〜!」
翔来は実行委員のテントに戻り、俺はみんなと一緒にクラス席まで戻ってきた。女子達は顔を赤くして喜んでくれている。俺も嬉しい。
「まだ、付き合ってないけど」
俺がそう言うと女子達は「いやもうこっち的には二人付き合ってるから」と素早く返された。そうですか…。
ここに戻ってくるまでに後輩からの注目度がやばくて、自分が翔来にでもなったのかと思う程。
(毎日こんだけの視線あびてる翔来すげえな)
…関心を他の方に向けないと、どうにかなりそうで必死にこの後のことは頭から放る。
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