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十九話め

中学最後の体育祭も終わり、椅子を教室に戻した生徒から続々と帰っていく。俺はみんなを見送りながら外を見つめる。 『自信持ちなよ』『絶対大丈夫だって』『好き好き!ってたくさん言っちゃいな』 ばらばらだけど帰り際に女子達がみんな俺のとこに来て、そう応援してくれた。 (もう、そういう期待してて良いのかな…) 外ではまだ実行委員が集まって話をしてて、翔来の先輩姿を目に焼きつける。完璧に仕事をこなして、疲れてるのに今日やり切って、…とにかく早くお疲れ様って言ってあげたい。 しばらくすると実行委員がみんな礼をしてそれぞれ離れていく。翔来がダッシュで校内に向かう姿に実行委員みんなが驚いててちょっと笑えた。 翔来は職員室に今日一日をまとめたレポートを提出すると言っていたので、俺も職員室に向かう。四階にいた俺はゆっくり階段を下りながら翔来のことを考える。 (もし、本当に本当に告白をしてくれたら) 想像するだけで顔も体も熱くなって、心臓はドキドキきゅんきゅんで大忙し。俺は当然翔来が好きだし、出来ることなら、…付き合いたい…。今も翔来は俺を一番にしてくれてるけど、もっと、特別枠に入らせてほしい…!こっこ、、こい、びと、なって、たくさん、したいこと、あるし。 (き、キス、とか…?うわあ、口にされたら俺死にそう…嬉しすぎて、爆発とか) 昼間の翔来を思い出して、ようはあれ以上の距離に近づくわけだろと、一人あたふたする。まだ告白かどうかも分からないのに翔来との甘い妄想を繰り広げて、大分時間をかけて職員室まで来た。 職員室の前でも落ち着きが無い俺を、たまに出てくる教師が変な目で見てくるけど気にしてられない。スライド式のドアを開けて、職員室の中から翔来が出てきた。一礼をしてから振り向いた翔来が「お待たせ」と微笑んだ。 (わ〜〜〜!もう好き!) はひぃ、と声も出なくなってしまった俺は翔来に手を引かれて下駄箱まで連れてかれた。手ぇ…! 「稜、ほら、靴変えな」 「…うん」 手を繋ぎながら翔来が俺の靴を出してくれた。上履きを脱いで下駄箱に仕舞い、スニーカーに履き替える。ぎゅ、と少し手に力を込めて翔来を見上げると競技途中で見た大人っぽい笑い方をして指を絡められた。 (ぁ……) 恋人繋ぎをしてる自分達の手を見て頬に熱が籠る。きゅうぅ、と胸が甘く鳴いてもう翔来と目を合わせることが出来ない。 「帰るか」 翔来に引っ張られ、少し前を歩く背中を見て、どうしようもなく好きだって思った。

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