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カウントダウン・セックス05
~蛍×莱耶の場合~
蛍side
『もう一軒いこうぜぇ』
寒空の下で、先輩がこぶしを夜空に突き上げる。ゼミの先輩が、鼻も頬も赤く染めて、千鳥足で次の行き先を指で指示している。どうやら次は駅前の飲み屋かカラオケか。
俺はハーフコートのポケットに両手を入れて、白い息を吐きだした。
さみぃ~。次に行くなら行くで、早く店を決めて欲しいんだけど。寒くて、まじでキツいから。
先輩たちは酒を飲んでるから、アルコールで身体がマヒしてんだろうけど。俺、一滴も飲んでないから。
『飲んで帰ってきたら、許さないから』って、莱耶に言われてる。大晦日。ずっと一緒に居られると思った矢先に、サークルの飲み会ってなったら、そりゃ怒るだろうなあ。
普段、仕事で莱耶と過ごす時間が少ないから。年末で一緒に過ごせるはずだったんだけど。
先輩のわがままで、いきなり呼び出されちゃ、こっちもたまったもんじゃない。恋人がいない野郎どもと、女子を引き連れての飲み会。俺は、先輩の引き立て役と、女子を釣るための餌……らしい。
俺がいると女子の参加率が高いと先輩に言われたが、あんまり真実味がないよなあ。
俺のサークルの参加率は最近、低いし。言い寄ってくる女子もいないのに。
「蛍くんは、大晦日にあいつらに付き合ってて大丈夫なの?」
4年生の先輩女子が、寒そうに立っている俺に声をかけてきた。
「大丈夫って?」
「彼女。いるんでしょ? その顔で、居ないわけないでしょ?」
「はあ……まあ。あんま大丈夫じゃないですよねえ」と俺が苦笑すると、いきなり先輩の手が俺の腕に絡みついてきた。
先輩が居ない側の頬に痛みが走り、耳もとではプシュッという音がした。
「……っつう」
俺の顔が歪むと、女子の先輩が「え? 大丈夫?」と声をあげた。
「あ……大丈夫です」
俺は先輩の手を解くと、痛みが走った頬に手を置いた。指先に赤い血がつく。
莱耶だな、これは。相当、怒ってるっぽい。
俺は指についている血を眺めながら、フッとほほ笑んだ。
「すいません、俺……帰ります」と近くにいる女子の先輩に頭をさげると、集団の輪から離れた。
「おい! 小森っ」と男子の先輩の声が背後でしたが、聞こえないふりをして振り返らなかった。振り返ってしまったら、引き留められてしまう。
そこで留まったら、さらに莱耶の怒りを買ってしまう。それは避けたかった。
とりあえず飲み会に参加した。予定していた人数が集まった。それで俺の後輩としてのやるべきことは出来た……ということにしてもらいたい。
先輩たちの集団の影が見えなくなるまで離れて、路地にスッと入った俺は、スマホを耳につけた。
呼び出し音が止まってから「相当、怒ってるでしょ」と俺は苦笑しながら口を開いた。
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