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第3話
12月31日、午前8時過ぎ――。
恋人の怒りを買いつつもなんとか卒論の提出を終えた僕は、新宿駅のホームにいた。
(アラタのこと、みんなになんて話そう……)
アラタが来ることは一緒に行くメンバーに連絡したものの、連れていく理由を聞かれたらどう説明していいのか分からない。
付き合っていることを知られたら、どう思われるんだろうか。
男同士だっていうのはやっぱり驚かれるだろうし、男女のカップルでだって相手方の友達との旅行についてくるなんてベタベタしすぎかもしれない。
白い目で見られる覚悟は必要か……。
と、頭を抱える僕の耳に、楽しそうな声が聞こえてきた。
「……ってことがあったんスよ!」
「あいつバイト先でもそうなんだ?」
「本当、緑川は独特だもんなー」
「マジ先輩は独特っすよね!」
振り向くと、一緒に行く友達2人に挟まれて、アラタがへらへらと笑っている。
(なに楽しそうにしてんの!? しかも僕のうわさ話で……)
こっちは真剣に悩んでいたのに、すでに馴染んでいる風のアラタに、肩すかしを食らわされた気分になる。
考えてみればこいつは、地味で大人しい僕の懐にさっと入ってきて、恋人にまでなってしまったような男だ。
コミュニケーション能力はめちゃくちゃ高い。
「あ、緑川! アラタくん、ほんといいヤツだな! 髪の毛こんなだけど」
友達の加藤が笑いながら言ってきた。
「そっか、邪魔じゃないならよかった……」
「邪魔なわけないだろー! 俺たちは大歓迎だから、ばんばん連れてこいよ」
機嫌のいい加藤の後ろで、アラタが僕に向かって目配せする。
(とりあえず、変に思われてないみたいでよかったけど。……こいつはなに考えてんだろ?)
今さらだけれど、ニコニコと旅行にまでついてくるのには何か目的があるような気がした。
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