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第6話

「僕はてっきり、アラタはそういうことに淡泊なのかと思ってたよ……」 ギラついた彼の瞳に気圧されながらも、僕は打ち明ける。 「バカ言わないでくださいよ、俺だって21歳の健康優良児なんですから」 「そっか……健康で何よりだ、あはは……」 そうだ、恋人の健康は素直に喜ぶべきことなんだろう。 健全な肉体に、健全な魂は宿るという。 それに僕だってアラタのことは大切に思っていて、次の段階に進むことはなんなら自ら望むべきことなのかもしれない。 けれども鈍い僕は、付き合い始めて1年経った今でも心の準備ができていなかった。 そうだよ鈍すぎる、鈍すぎますよ緑川さん。 恋人の欲望に1日でも早く気づいていれば、まさか友達との旅行先でこんなふうに迫られることもなかったのに。 (わっ!) アラタが伸び上がって、僕の腰を正面から抱きすくめる。 浴衣の胸と胸とが合わさり、湯上がりの熱と、速い心臓の鼓動が伝わってきた。 「つかまえた」 驚いているうちに、あっさり畳の上に組み敷かれてしまう。 「いい加減俺のものになってください」 無防備なうなじに、熱い舌が這わされた。 「ひっ……! だいぶ前から、アラタのものになってると思うけど……」 「なっていないところが、まだいっぱいあるでしょーが。……こことか、こことか」 浴衣の裾を割って入った手のひらが、脚の付け根から尻の辺りまで移動する。 彼の指先が意味深に滑っていたところが、それだけでじんじんと疼きだした。 「そこは……ダメ……」 「なんでですか、痛いことはしません。初めてなんだから、先輩の気持ちいいことしかしませんって」 耳元で説き伏せてくる、アラタの吐息が熱かった。 僕の言うことは割とよく聞くこいつのことだから、たぶん言っていることは信じていいのかもしれない。 ただあまりに性急に求められ、僕は動けなくなっていた。 「先輩のお尻、ちっちゃくてむちむち」 「やめて恥ずかしい」 「こういうお尻は絶対に才能があるから」 「なんの才能ですか……」 「エッチな才能に決まってるじゃないっすか」 尻を揉みながら、冗談めかして言われた。 「やあ、ん……」 大きな手のひらで熱心に揉まれるうちに、お尻が勝手に期待し始めているのが分かる。 アラタの指先が下着の上から尻の割れ目を滑るたび、素直な疼きが背筋を駆けのぼった。 「どうです? 先輩、俺に攫われる気になってきました?」 尻への愛撫と同時に、唇の先に軽くキスしながら聞かれる。 「んっ……でも……」 さすがに2人で消えたら加藤たちに変に思われる。 そんな俺の考えを見透かすように、アラタはため息交じりに言ってきた。 「……どうやったら先輩の理性、吹き飛ばせるんだろ?」 壁の時計が指す時刻は、19時10分。 アラタは俺の片脚をひざの裏からすくって持ち上げると、露わになった下着越しに自らの昂ぶりを押しつけてきた。 生々しい欲望を直に感じ、全身がカッと熱くなる。 「アラタ……こんなのダメだって……」 「なんにもしませんって! こうしてるだけです」 「『だけ』って何~!? めっちゃ当たってるのにっ!!」

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