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第12話

【 倉科side 】 俺は充をそのまま事務所において自宅へ車を走らせた。 そして気付いた。 俺のマンションと、雛森が住んでいるあの探偵事務所、あんまり離れてねぇんだなぁって・・・・・・ どうして今まで会わなかったんだろう? あいつに会わなかった五年・・・・・・ 隣にいなかったユキ・・・・・・ 久しぶりに触れたユキの体温が・・・・・・感触が・・・・・・まだ残ってる・・・・・・ とりあえず、二、三日生活できるくらいの私物をカバンに押し込んで・・・・・・ ガス栓や、電気、戸締りの確認をして・・・・・・ 最後に玄関の扉を閉めて・・・・・・鍵を掛けて・・・・・・ エレベーターで駐車場へ向かおうと思ったら、ちょうど下から上がってきた。 チン。 扉が開いて、そこに一人、男が乗っていた。 「よぉ」 って、なんであんたがココにいるわけ? 「ひな、も、りさん?」 ユキの叔父、雛森恭介が、なんで俺のマンションに来るわけ? ってか、なんでココを知ってる? 俺の個人情報はどうなってる? 「由貴のところに行くって?」 要から連絡が入ったらしい。 俺の持っている荷物をじろじろ見て、ギロッと睨まれた。 なんだよ? 俺も負けじと睨み返してみる。 「いけませんか?今は誰かが側にいてやった方がいいと思うんですけど?」 まだ犯人は捕まってないんだし? あんたは一緒にいてやらないんだろ? こんなこと、あんたに許可取らなきゃいけないわけ? 「その誰かってのが、お前だと?」 あんたは、ユキより依頼人の方が大事なんだろ? 「お前、中三ん時に由貴のことフッたんだろ?」 「なんっ!!」 ユキ、お前、このおっさんに言ったのか? 「中途半端な気持ちでアイツのこと振り回して、いらなくなったらまた捨てるのか?」 はぁ? 中途半端ってなんだよ! 「なんだよ、それ!!」 捨てるってなんだよ! 「お前、由貴の生い立ちを知っているな?」 知ってるさ・・・・・・ちゃんと、ユキの口から聞いてる。 「・・・・・・あぁ」 小さい頃に捨てられて、少しの間施設で育って・・・・・・ 雛森家にもらわれて・・・・・・ 大切に育ててくれたって・・・・・・ 一番可愛がってくれてるのが・・・・・・叔父の雛森恭介、あんただったってのもな! 「あいつは捨てられる事を異常に怖がるくせに、相手に負担をかけないようにって・・・・・・離れて行く相手を平気なふりして見送る厄介な性格をしている・・・・・・」 知ってるって言ってるだろ・・・・・・ いつでも他人先行思考。 あいつは、仲間数人で集まってる時でもいつも俺の後ろにいて、自分から進んで一歩踏み込んでくるようなことはしなかった。 両手を広げてやっても、すぐには飛び込んでこない。 腕を引っ張り寄せてやらないと・・・・・・ 自分から頼みごとをしないくせに、他のヤツから頼まれたらなんでも引き受ける。 それも、全部完璧にこなして・・・・・・ そのうちストレスで胃に穴が開くんじゃねぇかって思った事もある・・・・・・ それを、俺が隣でいつもカバーしてたんだっつうの! 「俺はなぁ・・・・・・反対したんだよ。由貴にお前の事を相談されて・・・・・・だがな、あいつが自分の気持ちを吐き出したのは、あれが初めてだったんだ。思わず応援しちまったが・・・・・・あんなことになるなんてなぁ」 ユキは俺に告白することを、このおっさんに相談してたのかよ・・・・・・ 「由貴が、どれほどの覚悟で臨み、どれほどの後悔したかなんて、お前考えもしなかったろ?」 覚悟って・・・・・・そんなこと・・・・・・ あの春の、桜が満開な・・・・・・ 今でも鮮明に思い出す事が出来る景色の中で、ユキがどんな表情をしていたかなんて・・・・・・ 俺ははっきりと思い出せない。 「あいつの真剣な気持ちに、お前は真剣に答えを出したのか?」 俺はあの時・・・・・・冗談だって思って・・・・・・ 「お前みたいなヤツを由貴の側に置いておくなんてことは出来ねぇ」 あんたの言う事も分かるよ、今なら・・・・・・ 俺は、あの時、真剣に答えてない。 でもこのまま・・・・・・あんたに言われてユキのとこに行かねぇっては、絶対にナシだ! 今更、あの時の告白が本気のものだったって気付いたって、後の祭り・・・・・・ あの時ユキを傷つけたのは変わらない。 あいつが、友達以上の感情で俺の事を好きって言ってくれたことに、俺はまだちゃんと答えを出せない。 でも!! あの時とは違う。 今は、ユキに謝って・・・・・・今の俺の気持ちをちゃんと話したい。 だから、あんたに邪魔はされたくねぇ! 「あんたが何て言おうと・・・・・・これは俺とユキ、2人のことなんで、あんたに口出ししてほしくねぇ!」 一発、二発、殴られる事は覚悟してた。 この人が大事にしてたヤツを、俺は傷つけて・・・・・・ 俺がしたこと、これからしようとしてることは、この人にとってムカつくことでしかねぇんだろうけど・・・・・・

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