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第27話

【 倉科side 】 まったく、油断も隙もあったもんじゃねぇ。 なにが、里中には電話しないだよ? 思いっきし掛けてんじゃん? リビングで男が4人身を寄せ合って、親機から聞こえてくる声に耳を澄ましている。 怪しいとは思ったんだよ。 舐めてんのか、ユキ? まさか、里中じゃなくって、エミリにだもんっとか言う気か? そう言う気・・・・・・なんだろうな・・・・・・ しかも! 会う約束までしやがって! 黙ってか? 俺達に・・・・・・っつうか、俺に黙って、そんなことしちゃっていいと思ってんのか? お前に何かあったらどうすんだよ? ニューハーフってのはなぁ、元男なんだぞ? 見てくれは女だけどなぁ、実際男なんだよ! あんなに肌白いとか、肌が艶々だとか、唇ぷるんってしてるとか、腰が細いだとか・・・・・・ いや、えっと・・・・・・ つまり、女みたいに綺麗だって思ったって、腕力だってあるんだよ! お前なんて押し倒されたらもう後の祭り! 何も抵抗できないまま喰われる! 着てるもん、全部剥ぎ取られて、生まれたての姿になって・・・・・・・・・ 泣きながら・・・・・・ 俺に助けを求めて手を伸ばして・・・・・・・・・ ダメだ! 今すぐにでも寝室に飛び込んでって、電話を取り上げて・・・・・・ぎゅ~って! 「倉科くん、落ち着いて・・・・・・どうどう」 充、俺は馬か! 「鼻息荒くなってるよ?どうどう」 要、てめぇもか! 「・・・・・・・りょっ」 「あんだよ、啓太」 何か言う前に啓太を睨みつけて黙らせた。 お前も何か言う気満々だったろ? 「・・・・・・別に」 あ、通話が切れた。 「・・・・・・よし」 ユキが・・・・・・よし? 思わず親機の受話器を持ち上げて・・・・・・ 「何が『よし』だ?」 冷静な声を出せたとは思う。 啓太と要がいそいそと寝室へ向かっていく。 やれやれっと言った感じで充が後に続いた。 ユキのヤツ、1人で里中んとこに乗り込む気だったな? 「こら、ユキ!」 その上目遣いはヤバイッて! ぐしゃぐしゃっとユキの髪を掻き回す。 「な、なに?」 ユキが俺の手を掴んだ。 お前、めっちゃ挙動不審。 後ろめたいんだよな? 悪い事したっていう自覚はあるんだな? やんわりユキの手を外して、そのまま俺はユキの頬に両手を当てた。 ビクッとユキの肩が跳ね上がったけど、逃がしてなんかやらない。 じっと瞳を覗き込む。 ったく・・・・・・お前は平気で危険な中に飛び込んで行こうとすんだから・・・・・・ 「お前、俺を不幸にさせたい?」 俺は、ユキを守りたいのに・・・・・・このじゃじゃ馬が! 「そんなこと・・・・・・」 ないよな? 折角両想いになれたのに。 俺達これからだもんな? 「じゃぁ、ユキはこれから一瞬でも一人にはなるな!」 ずっと俺の側にいろ。 絶対に離れるな。 「はぁ?ちょっと、待って」 待たねぇ。 「のこのこ一人で店に乗り込んでって今度こそ殺されちゃったら洒落にならないよ?」 充・・・・・・のこのこって・・・・・・嫌なこと言うなよ。 ってか、俺が守るって言ってんだろ? 「俺、死ぬ気はありませんけど?」 当たり前だ。 お前は俺が守る。 「だったら」 でも、止めたって聞かねぇんだから。 「作戦会議といこうじゃないか」 さてさて、でもまぁ、腹が減っては戦は出来ぬ。 兎にも角にも、まずは腹ごしらえしようぜ。 ユキが苦手とするものは抜いてやったし・・・・・・ いや、本来なら栄養の事も考えて、しっかり食べさせないといけないんだけど、コイツ、しっかりした味覚してっからなぁ。 摩り下ろして混ぜても分かるんだよなぁ。 充はワイン飲みたいとか抜かしたが、これは無視してやって・・・・・・ っつうか、これから敵陣に乗り込むんだぞ? 啓太もビールだと? てめぇら、危機感ってのはねぇのか? 酔っ払った状態で、里中んとこに行くつもりか? 相手は殺人鬼かも知れねぇヤツなんだぞ? 「あのねぇ、雛森くん・・・・・・僕の酔拳ってね、すごいんだよ」 ユキに擦り寄るな、啓太。 「ふぅん」 あ、ユキ冷たい。 まぁ、あれだけ啓太がべったりじゃ、1人抜け出すのは無理だな。 あいつの単独行動を阻止するためにも、ここは目を瞑るしかねぇのか。 あとは・・・・・・念のために石橋には連絡入れておくか。 ユキのこと、気に掛けててくれてるし・・・・・・ 桐条胡桃の手帳のこともあるし・・・・・・ 前に確か名刺もらったから・・・・・・ 俺はすんなりその場を抜け出して寝室に入った。 別に悪いことしたわけじゃねぇけど・・・・・・ 警察の人間相手に電話するのって、緊張するよなぁ? 「はい、石橋でございます」 へ? 女の・・・・・・人? 「あ、あの・・・・・・これって・・・・・・いしば」 間違えた・・・・・・わけじゃねぇよな? だって、石橋って言ったし? 「倉科さん?申し訳ありません、主人は今・・・・・・」 主人? え? おっさんって既婚者だったのかよ? って、俺の名前・・・・・・あぁ、俺の携帯登録されてるわけね・・・・・・ 久々に帰って今風呂に入ってるって・・・・・・はいはい。 お疲れ様です。 しっかし、品の良さそうな奥さんだなぁ・・・・・・ 「じゃぁ、あの、伝言お願いできますか?」 ユキが里中に約束を取り付けたことと、俺達がヤツの店に乗り込む時間を伝えて通話を終える。 「倉科?」 携帯を畳んだところで、ユキが寝室にひょっこり顔を覗かせた。 「どうした?」 出かける前に、ちょっとでも寝かせておかないとなぁ・・・・・・ 「いや、別に・・・・・・」 別にって・・・・・・? 「薬は飲んだのか?」 そう言った途端、ユキが渋い表情で近づいてきた。 「甲斐さんに無理矢理飲まされた」 は? 無理矢理? って、どうやって飲まされた? 自分で飲もうとしないから・・・・・・だから、充が・・・・・・しょうがないなぁ的な感じで? でも、要も啓太もいただろ? 変なことは出来ねぇよな? 「啓太のヤツが羽交い絞めなんかしやがるから、動けなくって」 う、動けなかったぁ? まさかの協力的な啓太? で、まさかの・・・・・・口移し? お前、充に唇を奪われたんじゃぁ・・・・・・俺だってまだしてないのに! 「え?く、倉科?」 あ、思わずユキの両肩押さえて壁に押さえつけちまった。 これって壁ドンって言う? 俺達両想いなんだもん、いいよな? だってさぁ、充と接吻だなんてダメだろう? さっさと消毒しねぇと! な? 「ちょっ、くっ、倉科ってば!」 なんで嫌がるんだ? この手はなんで抵抗するんだ? 抵抗した方が、俺が萌えるって思ってる演出? 「あ、あの・・・・・・そ、のぉ・・・・・・」 恥ずかしいのか? なんだよ、照れることねぇよ。 今、ここには俺達2人しかいねぇんだから。 ぎゅって目を閉じたってことは、OKだってことだよな? やべぇ、緊張してきたぁ・・・・・・ さっきの電話ん時とは段違いだぁ! ドッキンドッキン言ってるっ! これがユキに聞こえたら、俺カッコわりぃ!! いや、スマートに・・・・・・ 落ち着け、俺・・・・・・ すっと・・・・・・さくっと・・・・・・ いや、でも丁寧に、正確に、優しく・・・・・・そっと・・・・・・ソフトタッチで。 ごくんっ・・・・・・ うわっ、今生唾飲み込んだ音が異様に大きく聞こえたぁ! 「ごめん、邪魔だった?」 はぁ? 聞こえた方角に、ギロッと鋭い視線を向ければ・・・・・・ 充と・・・・・・要と・・・・・・ 「抜け駆けぇ!」 びしっと俺に向かって指を指す啓太がいた。 「人に向かって指差すな!」 それに何だ? 抜け駆け? んなわけねぇだろ! ユキは俺んだぞ! ぎゅっとユキを抱き締めて威嚇してみる。 ってか、ユキ・・・・・・お前、緊張しっぱなし? 指先までピンッ真っ直ぐで・・・・・・ ちゃんと呼吸しないと倒れるぞ? ちゅっ! 可愛すぎて、あいつらの目の前だってのに・・・・・・無意識にキスを落とした。 おでこ・・・・・・だけど。 「くらっ、くくくらっ」 啓太が騒いでるけど、そんなのに今は構ってやんない。 「可愛いぞ、ユキ」 思わず、その首筋に顔を埋め・・・・・・思いっきり吸い付く。 俺のっていう証を・・・・・・しっかり付けておく。 「これ以上悪い虫が寄り付かないようにっていう、おまじない」 あぁ、心配だ。 こいつ、自分がモテるっていう自覚ねぇからなぁ。

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