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【1章】6

「あの犬みたいな感じがいいんだよね」 鼻で笑いながら呟く凛生に、どこまで続くかなと脳内で嘲る。 「俺、後ろ下がるわ」 言い残し立ち止まると、凛生の表情が変わっていくのが見えた。先ほどの無表情とはうって変わり張り付けた紳士のような笑みにすり変わる。その表情にはさっきの不遜さも傲慢さも微塵も感じられない。 同時に自然に手を出され、今まで持っていた凛生の鞄を渡す。見向きもせず受け取ると歩みを進める凛生に追いついた男が嬉しそうに声をかけた。 「東雲(しののめ)先輩!おはようございます」 「橋見(はしみ)くん、おはよう。僕を待っていてくれたの?」 「はい!先輩と家が同じ方向って聞いたから…ご迷惑でしたか?」 垂れ目がこちらにおずおずと向けられる。俺を遠慮がちに気遣っているらしい。

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