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◇21話◇

「髏心后帝の尊様、何か……言いたげでございますね?私は、貴方様の付き人ですゆえ心の内を話していただいても構いませんよ……ですが、亞心大帝の尊様の命に背こうと画策なさるような発言はお止めくださいませ」 「…………」 髏心后帝の尊に対して、有無を言わせぬ兄の発言を聞いて、大和は絶句してしまう。髏心后帝の尊も、兄のあまりの剣幕を見て喉まで出かかっているであろう言葉を無理やり飲み込んだように見えた。 しかし、割と鈍感な大和でも此だけは分かる。 髏心后帝の尊は本当であれば、この郭になど来たくはないということと――己の実の父と(昔からのしきたりとはいえ)淫戯などしたくはない、ということだけは今の彼の落ち込んでいる態度から見るに明らかだ。 「髏心大帝の尊様、こう言うのは酷ですが……Ω種としてこの世に生を受けた貴方様が殿で生き残るすべは__何としても、亞心大帝の尊様との子を授かることでございます。貴方様が他に心を決めた人物がいたとしても……ここは辛抱ください。そうでないと、貴方様は__命を奪われかねませぬ」 「智子よ――我子は、分かっておる、それは分かっておるとも。父上にとって、我子など……駒でしかないことも__ようよう、分かりきっている……だが、今宵だけは……淫戯の勉学を休ませてほしい。色々とあり、疲れ申した。我子は__横になり休みたい」 唇をきゅっと固く閉じて己の本心からくる言葉を半ば強引に飲み込んでから、髏心后帝の尊はぎこちない笑みを浮かべつつ答える。 と、その直後だった____。 またしても、大和や兄――それに今度は髏心后帝の尊にとっても、予期せぬ出来事が起こったのだ。 「ろ、髏心后帝の尊様……っ__此方にいらっしゃったのでございますか!?大変にございます……っ…………!!船着き場に停めてあった船が、何者かの手により豪々と燃え盛っています。それだけでなく、船着き場の警護をしていた数人の警護人も何者かの手により命を奪われてしまいました」 「な……っ__何ということか……っ……」 先ほどまで、付き人である蓮翹の説教ともいえる言葉に打ちのめされ落ち込みながら、まるで地蔵のように立ち尽くしていた髏心后帝の尊だったが、背後から慌てふためいた別の付き人が現れ異常事態を宣告すると――そのまま、大和達三人を童子とは思えない程の凄まじい力で押し退けて外に向かって走り出してしまう。 異国から来た髏心后帝の尊は己が乗ってきた船が豪々と燃え盛っているという【船着き場】に向かうつもりなのだ、と__大和は瞬時に悟ったが、どうすべきなのか判断しかねてしまい、そのまま立ち尽くしてしまうのだった。

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