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 午後一時を過ぎた時刻でも、店内はそこそこ客が入っていた。入ってすぐのカウンターはテイクアウト用らしく、瑛太は顔なじみらしい店員の後につき、二人がけのテーブル席に座った。 「今日学校は?」  少し目つきの鋭い男の店員は、広務をちらりと横目で見た。瑛太とは顔なじみでも、広務とは初対面だ。どこの誰とも知れぬ不審者が瑛太を連れ回していると思われたのかもしれない。 「多分の風邪で早退になった。店長、この人、俺のほんとの父ちゃん。父ちゃん、この人は店長の望月さん」  店長と呼ばれた男は広務の正体が知れると、顔の緊張を少し緩めた。笑うと鋭かった目元が少し可愛くなる。瑛太を心配してくれるところなどを見ると、とても親切な人なのだろう。  瑛太が少し熱があったと告げると、ミネストローネにシェルパスタを入れたものを特別に作ってくれることになった。いわゆる裏メニューらしい。広務はその他にハムチーズレタスのバケットサンドと、飲み物を注文した。 「俺、カツサンドが食べたい」 「風邪の時に油っこいのはちょっとなぁ」  ごねる瑛太の髪をぐりぐりかき混ぜ、店長は笑ってキッチンに消えた。瑛太はぷくりと頬を膨らませ、顎をテーブルにのせた。 「瑛太はここの常連なんだ?」 「俺だけじゃないよ。サツキングもヨーチンも超ちっちゃい時から来てる」 「ふうん……」  鼻腔を擽るコーヒーの香り。あの頃と同じだ。広務は小学生の頃に戻ったかのような錯覚に陥りかけた。 「父ちゃん」 「うん……?」 「普通の日に父ちゃんとご飯食べに来るのって、なんか不思議でわくわくするね」  ああ、同じなんだ──。瑛太も、あの頃の広務と同じように感じている。ふわふわしてわくわくして、ちょっと落ち着かないけど、嬉しい気持ち。 「そうだね」  窓からさす陽の光が、瑛太の髪をキラキラと輝かせている。  瑛太もいつか、今日のこの日を思い出すのだろうか。

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