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「適当でいいよ」 「適当じゃ面白くないでしょう。ここを柔らかくするのも前戯のひとつだ──、そうだ。浴槽に湯を溜めます。湯が溜まるまでの間、ここを解すことにします」 「えっ!」  椎名は給湯のボタンを押しと、広務と共に浴槽に入った。ドバドバと音をたて、湯が徐々に溜まっていく。だとしても、浴槽の広さからして湯が溜まりきるまで、十分程度はかかると思われた。  向き合って腰を下ろそうとする広務を、椎名は向きを変えさせた。 「浴槽の縁に手をかけて──、そう、そうしてこっちに腰を突き出してください」  高く腰を持ち上げられ、広務は座ることを許されなかった。椎名の目の前に、広務の受けいれる場所が丸見えになる。 「ふうん……。まるで誰も知らないみたいに、綺麗できつく閉じてるんだな……」  ひとりごとみたいに呟きながら、椎名はそこをジロジロと見て検分した。ふうっと息を吹きかけられ、広務は更にそこを絞めた。 「ダメですよ。これからここを弄くるんだから。俺、初めてだから、いいとこに当たったら教えてくださいね」 「やっ、ああっ……!椎名……!」  双丘を思い切り割り開かれ、道筋をねろりと下から上へ舐められた。ゾクゾクと悪寒に似た快感に、広務は肌を粟立たせた。  椎名の指がゆっくりと抜き差しされる。くぷくぷと小さな泡が破裂するような音がする。広務が羞恥に身を捩るのを楽しむかのように、きっと椎名はわざとその音をたてているのだ。 「んぁっ……」  指の本数が増やされて、広務は足元からくずおれそうに力が抜ける。 「おっと……。もう少し我慢してください」  尻たぶを持ち上げるように手のひらで支え、椎名は広務の中にある指を蠢かした。 「ん、んんっ……!あ、んっ……」  全神経が後ろの口の内壁に集中する。まるで淫らな蛇がうねうねと動いているかのよう。 「もう……いいだろう?」  広務は首だけ振り返り、懇願した。 「まだです。まだ半分しか溜まってない」  本当に浴槽の湯が溜まりきるまで、椎名はこのまま愉しむ気らしい。 「く……うぅ……」  広務は浴槽の縁に額をつけ、ぐっと唇を噛みしめた。浴室に響く自分の喘ぎを最小限に抑えるためだ。 「あっ!ああっ!!」  しかしそんな努力を無駄にするように、椎名の指が敏感な点を掠めた。 「……もしかして、ここ?」 「あっ!あっ!だめだっ……、しいなぁっ……!」  強い刺激に涙目で振り返るが、椎名は新しいおもちゃを見つけた子供のように、嬉嬉としてそこを攻め立てる。 「あっ!んっ!ううっ……!お前、ほんと、意地が悪いっ……!!」 「ははっ──!褒め言葉として受け取っておきます」  広務が腰を落とすことを許さず、椎名は激しく指を動かした。もうじゅうぶんに解れたそこは、椎名の指を三本もくわえ込んでいる。  完全にたち上がった広務の熱芯は、強い快感に涙をこぼすように、たらたらと絶えず透明な滴をを垂らし続けている。 「もうっ……、もう、ほんとに……」  これ以上されると達してしまう。広務は自分の意思で、椎名に向けて腰を強く突き出した。 「……本当に『お強請り』が上手ですね」  椎名はため息と共に、広務の中から指を抜いた。その刺激すら、今の広務には強すぎる。すっかりと、湯は溢れんばかりになっていた。  椎名は、広務の向きを変えさせると自分の膝の上に抱きかかえた。 「よく頑張りました。じゃあ頑張った広務さんに、ここでこのまま抱かれるかベッドにするか、選ばせてあげます」  にこりと微笑む椎名は、昼間は見せるお日さまスマイルだった。

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