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「もうっ……!お前、セックスになると人が変わるって言われたことない?」
「さあ、どうかなあ?」
広務はぐったりと、椎名の肩に顎を乗せた。椎名は匂いまでお日さまみたいな匂いがする。だから広務の心を優しく溶かしてしまうのだろうか。
広務は勢いよく顔を上げると、強く椎名の唇を吸った。キュウッと音をたてて吸い付き、ポンッと弾けるように離す。
「んっ!ベッドでしよう」
「了解です」
二人の熱が冷めきらないうちに、熱い湯槽を出た。もつれ合いながらタオルでお互いの体を拭き、競うようにベッドへなだれ込む。
「あっ……、はあっ……。椎名ぁっ……」
広務はベッドに仰向けになると、大きく足を開いた。中心は萎えることなく天に向かって持ち上がっている。広務は自身を慰めるように、一度、二度とそれを扱いた。
「広務さんこそ、ベッドに入ると人が変わるって言われるでしょ」
広務にのしかかり、椎名は広務の熱を握った。熱く大きな手のひらで、無遠慮に上下に刺激される。
「あっ、いくっ……ぅっ」
達する気配を感じ、広務は体を弓なりにした。
「まだだめ」
放出を許さないように、椎名は根元をきつく握りしめた。広務の波がひくのを待ち、椎名は広務の体をひっくり返す。
高く腰を突き出すポーズで、再び広務の後ろを椎名の前に晒された。
「広務さんはこのラインが綺麗だ」
双丘の丸みを、愛でるように撫でられる。
「ん……、椎名……、して……」
広務は自ら両手で双丘を割り開き、強請った。
ぐっと椎名の熱が押しつけられ、徐々に内を侵していく。まるで熱い鉄の塊が侵入してくるようで、広務は充足感に感嘆を漏らした。
「や──、あっ!凄い……」
「すごいのは広務さんの方です。こんなに絡みついてくるのは、──はっ、あ……、初めてだ……」
椎名は上半身で広務の背にぴたりと覆いかぶさり、耳元で熱く囁いた。鼓膜に息を吹き込まれ、広務は喉をそらせた。
「椎名、キス」
苦しい姿勢で首を捻り、椎名の唇を強請る。口吻のためにぐっと更に身を乗り出されれば、椎名の杭が広務のもっと深いところを突き刺す。
「はっ、あ、ああっ!椎名っ」
堪らず叫ぶと、椎名は体を起こし広務の腰を掴んだ。背後から遠慮なく突かれ、逃げようとしても、椎名の手はそれを許さないと言わんばかりに広務の腰にくい込んでくる。肉に爪を立てられて、広務は甘い痛みに悶えた。
「はっ──、はっ、はっ……!」
椎名は息を荒げ、激しく抜き差しする。日常の全てを今だけ忘れろ、とでも言うかのように、広務を快感の波に引き摺っていく。
肌のぶつかり合う音、結合部から立つ水音、広務の甘やかな声、椎名の息づかい。聴覚から侵されて、広務は目を閉じた。椎名に与えられるまま、快感を追う。
「ああっ──!も、う……」
広務は前で放出しないまま、内側が拾う快感で達した。長く尾を引くような快感に、全身を脱力させる。意識せずとも内側は椎名を貪るように収縮し、彼が中で弾けるのがわかった。
「はっ、はあっ──。すごかったです……」
広務の中に自身をおさめたまま、椎名が背後から抱きついてきた。一回達したのに、まだ緩く芯が通っている。
「椎名ぁ、ちょっと休憩……」
今にも動きを再開しそうな椎名をいなし、広務は椎名の腕の中で振り返った。腕を伸ばし椎名の顔を引き寄せ、穏やかなキスをする。
「椎名、ありがとう」
「……なんで礼なんか言うんですか」
椎名はふてくされたように眉を寄せた。
「俺があなたを抱きたかったから抱いたのに。なんで、ありがとうなんて言うんですか」
「だって、お前わざと酷くしたんだろう?俺が何も考えなくてすむように」
ことの最中、椎名のキャラはいつもと違いすぎた。広務を翻弄させ、余計なことで憂う暇を与えないためなのだろう。
しかし椎名は片方だけ口角を上げて、ちょっと意地悪に笑う。
「そう思いました?」
「え?う、うん……?」
「残念ながら、半分正解で半分ハズレです。広務さんが俺のことしか考えないように、いやらしいことをしたいと思っていたのは正解。でも残り半分は、いやらしくされて戸惑う広務さんを見たかったから」
「えっ」
広務は呆然と口を開けた。まさかあれが椎名の隠された本性だったとは──。
「お前、やっぱ、人が変わるって言われるだろ……?」
「うーん、どうかなあ。寝た相手は、みんな喜んでましたけど?」
忠犬の笑顔でニコリと微笑み、椎名は広務の首筋に顔を埋めた。ゆっくりとそこから愛撫が始まるのを感じる。
「ねえ、今夜……。帰らなくていいんですか?」
広務の返事次第では、今夜はここで諦めるつもりのようだ。
「今日瑛太は友達んちにお泊まりだから──、あっ!」
広務の返事を聞くとすぐ、椎名は激しい愛撫を再開させた。
「今夜はまだまだつきあってくださいね」
ブンブンと見えない尻尾が椎名の背後で揺れている。広務はため息をひとつ吐き、椎名のキスを受けいれようと唇を開いた。
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