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第3話
side一縷
俺、立華一縷 は332D地区に住んでいる。高二だ。
332D地区は第二の性の差別に関して国内で最も厳しいとされる地区のため、国内で最も安全な地区とも言われている。
この地区では、第二の性絡みの性犯罪はまず起こらない。
この地区で性犯罪を犯すと死刑が待っている。情状酌量も何もない。死刑一択である。
なので、誰も性犯罪を犯そうとはしない。
ちなみに、俺の性別は男で、βだ。特技は複数の音を聞き分けられること。
今は蒼の迎えに向かっている。
高校入学してすぐくらいに、蒼から『明日から高校へは一縷と一緒に行くなら、送迎車じゃなくても登下校していいって確約もらえたんだけど、朝うちまで迎えに来てくれない?』というSMSをもらった。
もちろん断る理由もないため承諾し、それから毎日蒼の家まで迎えに行っている。
蒼こと、東条蒼 は東条ホールディングスの御曹司で、俺の幼なじみだ。
幼稚園から一緒で、家も近所なので家族ぐるみでの付き合いだ。
小学校上がってすぐくらいに蒼が誘拐されたことがあった。
子供の誘拐は、発生から72時間がタイムリミットと言われているが、すでに48時間が経過してた。
俺の親父が捜査本部のトップだったことから、俺の耳の良さを認められて、捜査に協力した。普通ではあり得ないことだが、蒼のためにできることはどんなことでもやりたかった。
犯人からの電話を聞きながら、どんな小さな音も聞き漏らさないように記憶し、聞こえた情報を全て伝えた。
蒼が監禁されている場所があっという間に特定された。今まで見つからなかったことが嘘のように。
俺も急ぎ監禁場所に向かうと、既に蒼が保護されていた。
もう少し遅かったら殺されていたかもしれないと親父から聞かされて、すごく恐怖したのを覚えている。
蒼を見ると青ざめた顔で俺を見て弱々しく笑いかけてくれた。
首には犯人の指の痕がくっきり残っていた。
親父から聞かされたばかりの内容がやたら現実味を帯びてきて、あまりの恐怖で泣きながら蒼の元へ行き、一緒に救急車に乗って病院へ行った。
蒼がいない世界なんて…。
初めて蒼を恋愛対象として好きだと思ったのがその時。
蒼にはもちろん、誰にも教えていない、俺の秘密。
絶対にこの気持ちを打ち明けてはいけないと、子供ながらに今の関係が崩れることを懸念した。
この事件以降、東条家からは絶大な信頼を得たのだった。
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