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第13話
side一縷
蒼を泣き止ませている間、俺は夢を見ているかのような映像を見ていた。
起きていたのおか、うたた寝していたのか、今一つ記憶がはっきりしない。
見ていた映像は、どこか懐かしいと思える風景ばかりだった。
俺の隣にはすごく綺麗で可愛らしい女性がいて、彼女を俺は『葵』と呼び、彼女は俺を『壱瑠』と呼んでいた。
俺は彼女をよく知っていた。だけど、思い出せない。
思い出せないけど、彼女のことを愛していた。
結婚式をしていたのだろう。二人の着衣が、紋付き袴と白無垢だった。
ところが、二人は何かから逃げているようだ。手に手を取って、走り続けている。
すごく流れの速い川の側まで行き、二人で何かを誓い合っていた。
その後、お互いに刃物を突き刺し合って、川に身を投げた。
すごく断片的ではあるが、懐かしくて胸が温かくなるが、切なくもなった。
そして、俺は忘れてはいけないことを忘れている気がする。
それが何なのか、今の俺には分からない。
でも思い出さなければならないことなのは直感で分かった。
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