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第16話

蒼の家に着き、自動の門扉をくぐって、あと少しというところで蒼の様子がおかしいことに気付いた。 蒼の顔が上気して、目の焦点が合っていないし、蒼の周りがやたら甘い匂いで充満している。それに充てられた俺も、興奮していた。 今の状況から察するに、たぶん発情期だ。 小学生の頃から散々知識として刷り込まれてきたことだ。 今更パニックになったりはしない。 だけど、体はいうことを聞かない。 蒼を襲えと本能が叫ぶ。 体がその叫びに従いそうになる。 だけど、蒼に誓ったんだ。 「見境なく蒼を襲ったりしない」と。 その誓いを反故にするわけにはいかない。 理性で無理矢理制御しているが、少しでも気を抜いたら襲ってしまいそうになる。 これが、αとΩの運命なのか。 そう思いながら、蒼を部屋に連れて行き、即座に俺は帰ろうとした。 だが、蒼が俺の袖をくいっと引っ張る。 今の状態で一人にされるのは寂しいだろう。 だけど、今の状態の蒼と一緒にいて何もしないでいられるほど俺は紳士じゃいられなかった。誤魔化すほどの余裕もなく、今の気持ちをありのまま蒼に伝えた。 「あお、ごめんな。今のあおと二人でこの部屋にいたら、あの時の約束破って、間違いなく俺はあおを襲っちまう。だから、今は帰るよ」 「...いち、僕は構わないよ、いちに襲われるなら。覚悟なら当の昔に出来てる」 蒼はすごく真面目な顔で答えてくれた。 蒼は本当に覚悟出来てる。 意気地がないのは俺だ。 だけど、今襲ったら確実に蒼を孕ませるまで犯してしまいそうだった。 俺の理性を総動員させて耐えた。 「俺たちはまだ学生だ。何かあってからじゃ遅いだろう?」 さすがに蒼も学生という建前の前には納得せざるを得ない感じだった。 「また帰ったら連絡するから」 そう言って蒼の部屋から急いで逃げ帰った。 その日の夜は、何も手がつかず、ひたすら一人で抜いた。 蒼のことを思いながら。 落ち着いた時には日付が変わり、ゴミ箱の中身が溢れ返り、部屋の空気が俺の出した物の匂いで充満していた。 それから蒼は1週間休んだ。 登校できるようになったと連絡をもらったので、蒼の家に迎えに行った。 すると、蒼とはこの間のことは何もなかったかのように、いつも通り変わらなかった。 俺だけがすごく気にしていたみたいで、たまらなく恥ずかしかった。

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