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第17話
side蒼
判定から随分経って、今日は体育祭。
毎年各クラスすごく熱いバトルを繰り広げている。
何てったって優勝クラスには豪華賞品があるんだもの。
去年は僕のクラスが優勝した。
豪華賞品は秘密だけど、すごく感動したなぁ。
それくらいすごい商品が待ってるんだもの。
そりゃ、皆死に物狂いでがんばっちゃうよね。
かく言う僕も、これから騎馬戦に出場する。
去年はやらずに済んだんだけど、今年はじゃんけんで負けっちゃったんだよね…。
毎年すごい怪我人出てて、ひどいと病院に搬送されるって聞いた。
そんな競技、最初は僕には向いてないって断ったんだけど、最終的にじゃんけんで負けたから仕方ないよね。
皆公平に決めたことなんだもん。
保健委員してる一縷には、競技が決まった日の帰り道で報告しておいた。
そしたら、一縷にしては珍しく怒ってた。
「なんで蒼が出ないといけない。蒼みたいに優しい性格の奴が出る競技じゃないだろう」
「僕のクラスから出る人いなくてじゃんけんになって…負けちゃったんだよ」
「大きい声出してごめんな。騎馬戦の時間だと救護所当番だから、救護所から応援してるな」
「見てもらえるか分かんないけど、やれるだけやるよ。がんばるね」
一縷は僕のことを心配して怒ってくれた。
僕のことで怒ってる一縷を見るのは少し嬉しい。
それに、一縷が保健委員してるから、怪我しても誰も知らない救護所に行かなくて済むのは、少し気が楽になった。
そんなことを思い出してると、騎馬戦がすぐ始まるところだった。
一縷がいる救護所からは、少し見えづらいかもしれないし、手が離せなくて見てもらえていないかもしれない。
だけど、一縷が見てる時にかっこ悪いところは見せたくないから、思いっきりがんばっちゃうんだからっ!
ピーッ!
笛が鳴って、騎馬戦開始。
僕はうまく敵の間をすり抜けながら、敵のはちまきを奪っていく。
1本目…2本目…。
3本目を取った時だった。
後ろから敵に襲われた。
何とか騎馬役の子たちががんばってくれてたから、僕も必死でがんばった。
それが裏目に出ちゃって、落馬した。
何よりもかっこ悪い…。
一縷に見られちゃったかな?
見られてたら嫌だなぁ…。
騎馬戦が終わり、怪我人は救護所へ行くようにとアナウンスがあったので、僕も一縷のいる救護所へ向かった。
どうやら一縷は一部始終見ていたらしい。
僕が到着すると、すごく心配そうな顔で迎えてくれた。
傷口に砂が付いていたので、一縷に付き添ってもらって、水道まで向かう。
そこで僕の歩き方がいつもと違うことに気付かれた。
落馬した拍子に足首を捻ったようだ。
歩くと少し痛い。
「足、痛いのか?」
「うん。擦りむいただけじゃなくて、軽くひねったみたい」
とりあえず先に擦り傷に付いている砂を落とす。
何で擦り傷の砂を落とすのってあんなに痛いんだろう?
痛いの嫌いな僕としては辛い。
洗い流した後、救護所に戻って、擦り傷の手当をしてもらい、保健室の先生に足首を診てもらった。
やっぱり捻挫だそうだ。
僕は騎馬戦以降の競技で参加する競技はなかった。
一縷も参加競技はないようで、ずっと僕の側でいてくれた。
あっという間に体育祭も終わり、いつものように帰宅する。
「今日ばかりは運転手さん呼んだ方がいいんじゃないか?」
迎えに来てくれた一縷が言い出した。
確かに今の僕は捻挫してるから安静第一なのは分かるよ。
だけど、唯一一縷と二人きりでいられる貴重な時間を誰にも邪魔されたくなかった。
「嫌。いちと一緒に帰りたい」
頑なに一縷の言葉に頷こうとはしなかった。
頷いてしまうと一縷と一緒にいられなくなるような気がしたから。
そんなこと本人には言えないけど。
一縷との攻防戦は一縷が折れてくれて、一縷の肩を借りて、なるべく足に負担を掛けないように歩いて帰った。
ただし、本当に痛くてたまらなくなったら運転手を呼ぶ条件付きでだけど。
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