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第18話

何とか家に着いて、門扉をくぐったあたりから、何か意識が朦朧としてきた。 呼吸っていつもどうやってたっけ? 体が熱い。 風邪でも引いたかな? 今まで普通に歩いていた足取りもすごく重くて、歩くので精一杯なくらいだ。 今まで知識として入れてきたから分かる。 たぶん発情期だ。 Ωだと分かった時に東条家専属の病院に受診して、そろそろ発情期が来るだろうとのことだったので、その時処方してもらっていた薬も毎日忘れずに内服していた。 もしかして、薬が体質に合っていなかったのかな? 何だか意識が朦朧としすぎて、何を考えているのか分からなくなってきた。 部屋に着いた。 すると、一縷はもう帰ると言う。 嫌だ。 今日はまだ一緒にいたかった。 こんな気持ち初めてだった。 僕は無意識に一縷の袖を引っ張っていた。 突然発情期が来て、一人残されるのは寂しいと一縷は思ったんだろうな。 でも、一縷と僕はαとΩ。 本能に抗うことはすごく大変だったはず。 それなのに、一縷は最後まで紳士的だった。 「あお、ごめんな。今のあおと二人でこの部屋にいたら、あの時の約束破って、間違いなく俺はあおを襲ってしまう。だから、今は帰るよ」 明らかにαの本能を理性で抑え込もうとしている。 今の一縷の顔すごく魅力的。 そんなことを思っている僕は完全にΩの本能に飲み込まれていた。 「...いち、僕は構わないよ、いちに襲われるなら。覚悟なら当の昔に出来てる」 これは本音。 一縷と僕がαとΩだと分かった時から、ずっと思ってきたこと。 一縷になら初めてを捧げても構わなかった。 だけど、一縷も考えてたことがあったようだ。 「俺たちはまだ学生だ。何かあってからじゃ遅いだろう?」 言われてみれば、確かにそうだ。 もし、子供ができてしまったら、確実に僕は休学することになるだろうし、子供の父親が一縷だと周囲に知られた時、困るのは僕らだ。 そこまで考えてくれてたなんて。 僕は何て浅はかな考えしかしてなかったんだろう。 すごく恥ずかしい。 一縷の言葉には納得せざるを得なかった。 「また帰ったら連絡するから」 一縷は部屋から出る間際、僕が一人残されても寂しくないように気を使ってくれた。 そんな優しい一縷が大好きだった。 一縷が帰ってからが本当に大変だった。 一縷は帰り際、母に僕が発情期が来たことを伝えてくれていたようで、僕の主治医に連絡して往診してもらった。 レベル的にはかなり重度で、僕の部屋へは誰も近づけないこととされた。 学校も1週間休むこととなって、遅れている勉学が更に遅れることとなってしまった。 1週間後、主治医から登校許可が出たので、一縷に明日から一緒に学校に行ける旨をSMSで伝えると、翌朝いつものように迎えに来てくれた。 あの日、すごく迷惑をかけたから、きっと一縷は気にしてるに違いない。 何もなかったように振舞うことで、僕は一縷の懸念を減らすにした。

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