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第19話

side一縷 蒼の初めての発情期以降特に俺たちの関係が変わることはなかった。 たぶん蒼が気をきかせてくれてたんだろう。 なるべく俺が気にしないようにと。 その後俺も蒼も進学希望だったので、受験勉強に毎日明け暮れた。 そして、高校卒業の日、蒼は大事な話があるから蒼の部屋まで来てほしいと言った。 とりあえず着替えたかったので、一旦家に戻って、それから蒼の家に向かった。 部屋に着くと、いつものように定位置にお互い座り、蒼は話始めるタイミングを伺っているようだった。 意を決して、蒼が口を開いた。 「単刀直入に言うね。僕、大学は海外留学することにした」 青天の霹靂だった。 俺はてっきり国内のΩが多数通っている大学に進学するものだと思っていた。 大学になれば、多少離れるとは思っていたが、日本と海外ほど離れるなんて想像もしていなかった。 「いちにこのことをいつ言うかずっと悩んでた。言ったら、いちも一緒に海外に行くって言うでしょ?いつまでもいちに頼ってばかりじゃいけないと思ったんだ。僕はいちから自立しようと思う」 蒼の決意は固まっている。 今更俺がどうこう言って解決する問題ではないらしい。 納得するしか他なかった。 「年に何回かは帰ってくるんだよな?」 「帰ってくるつもりだけど、忙しいと帰ってくるの難しいかもしれない」 「…そうか」 「うん」 絶望した。 今まで毎日のように顔を合わせてた蒼と海の向こうまで離れないといけない。 海外だと片道の旅費だけでも、結構な額するはず。 おいそれとは行けるものでもなかった。 「あおは大丈夫なのか?一人で海外で生活していくことに」 「一人暮らしになるから、さすがにΩしか住めない居住区に住めるように手配したよ。だから犯罪に巻き込まれることもないとは言えないけど、割と低くなると思う」 「大学はα・β・Ωの共学なんだろ?」 「僕が行く学部はΩしかいない学部でセキュリティーとかもしっかりした校舎だから大丈夫だよ」 「校舎は大丈夫かもしれないけど、万が一構内で襲われるかもしれないだろ?」 「ここと同じくらい第二の性についての法案が厳しいところだから、大丈夫だよ。仮に襲われたとしたら、襲った相手は退学処分になるから。ぬるい校則じゃないから安心して」 蒼はちゃんと下調べしていた。 俺が聞くであろうことが分かっていたからかもしれないけど、ちゃんと調べてた。 俺がいなくても、蒼は一人でやっていこうとしている。 俺ばかり蒼に依存してちゃ、かっこ悪いよな。 「分かった。4年だよな。日本で待ってるよ。帰ってくる時は、ちゃんと連絡しろよ」 「もちろんだよ。なるべく連絡するから」 衝撃の事実だったけど、これをきっかけにして、俺も蒼から少し自立するいい機会かもしれない。 いつも一緒だった。 学校でも、休みの日でも。 半日以上会えない時間がないくらい、ずっと一緒にいた。 それが、もうすぐ数か月単位で会えなくなる。 最初はきっと俺の方が寂しくて、頻繁に連絡してしまうだろう。 考えるだけで、すごいかっこ悪い。 だけど、離れてる間に男を磨いて、堂々と蒼の隣にずっといられるかっこいい男にならないと一生蒼の隣にいるっていう蒼のお父さんとの約束を守れない。 かっこいい男になるためには、やることが山積みだ。

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