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第23話

side一縷 飛行機で14時間。 完全に時差ボケしている。 さすがにこればかりはどうとなるものではない。 とりあえず予約していたホテルにチェックインをしに行く。 蒼に会いに行くのは明日だ。 今日1日で時差ボケを治さないと。 チェックインを済ませ、部屋に入り、シャワーを浴びる。 心地よい温度のお湯で体が温まったことで睡魔が襲ってきた。 軽く2時間だけ寝る。 スマホのタイマーを2時間後にセットし、ベッドに入る。 『ピピピッ』 アラームが鳴る。 もう2時間か。 「んんー」 背伸びをすると関節がパキパキと音を立てた。 軽く寝て少し楽になった。 今の時間はお昼時だ。 さすがにお腹が空いた。 少し外の空気を吸うついでに、街に出てみた。 俺たちが生活していた街並みに似ている。 ビルがひしめき合っている。 何か食べられる店を探す。 だけど、明日のことを考えるとだんだん緊張してきた。 緊張してくると、さっきまであった食欲がどこかへ行ってしまった。 さすがに何も食べないでいるのも体に悪いので、コンビニでサンドイッチとコーヒーを購入し、ホテルへ戻る。 部屋でサンドイッチを食べながら、明日のシュミレーションをして、再びベッドに入った。 翌朝、気持ちのいい晴天だ。 この日のためにオーダーメイドで仕立てたスーツを着て、蒼への土産を胸ポケットに仕舞ってホテルを出る。 蒼の住所は蒼の両親から聞いていたので、電車を乗り継いで到着した。 蒼の部屋のインターホンを鳴らす。 「I'm coming」 久し振りに聞く蒼の声。 泣きそうになる。 ここで泣いたらかっこ悪いので、ぐっと堪える。 ドアが開いて、俺の姿を見た蒼は目を見開いて固まった。 そりゃそうだ。 メールせずに来てるから驚くのも無理はない。 「ひさしぶり」 「いち、急にどうしたの?」 「休み取れたから会いに来た」 「こんなところじゃなんだし、中入ってよ」 「ありがとう。お邪魔します」 「ごめんね。いちが来るなんて思ってなかったからすごい散らかってるんだ。空いてるスペースに座ってて」 蒼はお茶を用意しにキッチンに入った。 前は蒼のお母さんが持って来てくれないと、自分じゃ何もしなかったのに…。 随分逞しくなったなぁ。 そんなことを思っていると、蒼が戻ってきた。 「ろくなものなくて…。ごめんね」 「研究忙しいのか?」 「うん。今やっている研究が認められたら、僕みたいにΩの発情期の重症な子でもだいぶ楽になるはずなんだ」 「そんなすごい研究してるんだな」 「全然すごくないよ。いちはどうなの?」 「俺は主任になった。リーダー的役割って感じかな。任される仕事も増えて毎日大変だ」 「いちの方がすごいじゃないか」 お互いの近況報告をしながら、俺は大切なことを言い出すタイミングを計っていた。 ちょうど話が切れたところで切り出した。 「俺が今回あおのところに来た本当の理由は、休みが取れたから会いに来たんじゃなくて、大事な話があるからなんだ」 蒼はきょとんとした顔をして、首を傾げている。 相変わらずかわいい。

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