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第24話

「俺、高校の時あおからの誘い断っただろ?あの時言ったことは本音だ。学生だったし、何の力もない子供だった。だから、必死で今までやってきた。一流企業に就職して、役職も付いた。やっと今このタイミングだって思った。だから、あおのところまで来たんだ。はっきり言います。東条蒼さん、俺と結婚してください!」 俺は胸ポケットから青いベルベット調の小箱を開けた。 入っているのは、蒼のために俺がデザインした指輪。 蒼は真顔のまま微動だにしない。 2、3回まばたきしたと思ったら大粒の涙を零し始めた。 まさか泣かれると思わなかったから慌てた。 「ごめん、あお。泣くほど嫌だったか?」 「ううん。泣いてごめんね、いち。ありがとう。嬉しい。僕の方こそ、不束者ですが、末永くよろしくお願いします」 今まで見たことないくらいの眩しい笑顔で俺に抱きついてきた。 最高にかわいくてたまらない。 力任せにギューと抱き締めた。 これが幸せってやつなのかもしれない。 休みの間、蒼が部屋に泊まればいいと言ってくれたので、お言葉に甘えてホテルを引き払って蒼の部屋に泊まらせてもらった。 あっという間に休みが終わる。 日本に帰らなくてはならない。 蒼は空港まで送りに来てくれた。 チェックインを済ませ、手荷物を預けた。 もうすぐ蒼と別れなければならない。 後ろ髪引かれながら保安検査場前で蒼と別れる。 別れ際、蒼から唇が触れるだけのキスをしてくれた。 その時、再判定の結果発表の日に見た映像が頭の中に投影された。 俺は『壱瑠』で蒼が『葵』だ。 あの川の映像は、心中するところだった。 心中する前に『来世で必ず結ばれる』ことを約束した。 それまでのデートの様子から、あんなことやこんなことまで…。 全部思い出した。 唇が離れ、蒼と目が合う。 蒼も同じようだった。 「俺思い出したよ、全部」 「僕も」 「あおが『葵』だったんだな」 「いちが『壱瑠』だったんだね」 「俺たち生まれる前から恋に落ちてたんだな」 「そうだね。これが運命ってやつなんだね」 「俺たちこそ本当の運命の番だな」 「うん。あの時の約束が今世で果たせて、いちに出会えて、恋できて、本当によかった」 「俺も」 そう言い終わると、俺たちはさっきまでの触れ合うだけのキスではない、舌を絡める深いキスをした。 研究が一段落ついたら日本に帰ってきてくれると蒼と約束して俺は飛行機に乗った。 蒼が帰ってきたら各所へ挨拶しなければならない。 俺にとってもう一つの大仕事が待ち構えていた。

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