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第25話
side蒼
毎日研究が忙しい。
最近は研究室から帰ってシャワーを浴びて、着替えてから、また研究室に戻る生活。
今日は珍しくゆっくりできそうだ。
シャワーを浴びて、朝食を作る。
作ると言っても、簡単なものしか作れないけど…。
今日はベーコンエッグを作ることにする。
パンをトースターに入れて焼いている間に、ベーコンエッグとヨーグルトを準備する。
トースターから焼き上がりのパンが出てきて、熱々のパンにジャムを塗り、手を合わせて「いただきます」をする。
あっという間に食べ終えて食器を片付けている時だった。
インターホンが鳴った。
「I'm coming」
玄関へ向かう。
ドアを開けると、ずっと会いたかった人がいた。
一縷だった。
あまりに驚いたので言葉をかけ損ねてしまった。
「ひさしぶり」
「いち、急にどうしたの?」
「休み取れたから会いに来た」
「こんなところじゃなんだし、中入ってよ」
「ありがとう。お邪魔します」
「ごめんね。いちが来るなんて思ってなかったからすごい散らかってるんだ。空いてるスペースに座ってて」
一縷が来ると分かっていたら部屋の片付けしたのに…。
すごい散らかってる。
資料とか置きっぱなしにしてるから足の踏み場がないし、座ってもらう場所もない。
恥ずかしさ、この上ない。
とりあえずお茶を出すためにキッチンへ行ったが、大したお茶菓子がない。
食べられそうな物を適当に皿に出して一縷の元へ持って行く。
「ろくなものなくて…。ごめんね」
「研究忙しいのか?」
「うん。今やっている研究が認められたら、僕みたいにΩの発情期の重症な子でもだいぶ楽になるはずなんだ」
「そんなすごい研究してるんだな」
「全然すごくないよ。いちはどうなの?」
「俺は主任になった。リーダー的役割って感じかな。任される仕事も増えて毎日大変だ」
「いちの方がすごいじゃないか」
話が途切れた。
そんな時一縷が神妙な面持ちで話を切り出した。
「俺が今回あおのところに来た本当の理由は、休みが取れたから会いに来たんじゃなくて、大事な話があるからなんだ」
何か僕に直接言わなければならない話があったんだろう。
とうとう一縷も結婚する相手ができたとかなのかな?
本当にそうだったら、ちゃんと祝ってあげられるかな?
笑えるかな?
泣かずにいられるかな?
良からぬことを一度考え始めるとどんどん悪い方へ進んでしまう。
そんなこととは露知らず、一縷は話を進めた。
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