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第4話

 入江と同じDNAを持つ彼は、弟以上に優れた容姿をしている。美しい所作に彩られ、品格は兄弟でも雲泥の差だ。 「生徒会長と有伎が兄弟って信じらんねえ」 「並ぶと格が違う。親のいいとこ全部兄貴に持ってかれたな」  ほうっと兄の背中に見惚れていたクラスメートたちが、現実に戻ったとたん軽口を叩く。からかうように押し付けられた浅慮な言葉を、入江が「るせぇ」と笑って蹴散らした。教室に笑い声が響く。ごく日常のワンシーン。けれど柊馬だけが、その空気に心底うんざりしていた。  ――どいつもこいつも反吐が出る。  やつらは当たり前のように他人を比較して、安全な場所から巧妙に攻撃をしかける。親しき仲に礼儀なんかない。さりげなくマウントを取り合って、自分の方が上だと安心する。アレを友情と履き違えていた時期が柊馬にもあるからこそ、過剰に反応してしまうのだ。  午前の授業が終わると、柊馬はすぐさま弁当を持って人気のない場所へと移動した。窮屈な学校生活の中で、ほんの少しでもリラックスできる瞬間を作るというのは大切なことだ。  多少埃っぽくはあるが、音楽棟の階段を上りきった、屋上扉前の踊り場に腰を下ろす。ここならば柊馬と同じ普通科の人間は立ち寄らないし、音楽科の生徒たちの憩いの場からも距離がある。誰に遭遇することもなくゆっくりできる、柊馬のお気に入りの場所だ。
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