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第5話

 ロッカーから引っ張り出してきたクッションを敷き、投げ出すように長い手足を伸ばす。弁当の包みを広げたとたん、誰もいないはずの空間に聞き覚えのある声が響いた。 「へえ、ホモ近っていつもこんな場所で寂しくメシ食ってたんだ?」  顔を見なくても誰だかわかる。一瞬にして壊された静寂を惜しむあまり、思わず舌打ちが飛び出した。 「おいホモ、なに舌打ちなんかしてんだよ」 「ごめん、つい」 「ついじゃねえよ!」  苛立たしげに中腰で胸もとを掴んだ入江が、柊馬の顔をのぞきこむようにして鋭く睨む。自分より体格の劣る相手にすごまれても何も怖くないということが、彼には理解できないのだろう。なんせ自分の方が優位だと思い込んでいるのだから。 「いつもホモホモ呼んでるくせに、こんなに顔近付けていいのか」  平坦な声でそう告げると、指摘されて始めて気付いたらしい入江が目を見張る。普段は面倒で言い返しもしない柊馬に、対等な口をきかれたのも気にくわないらしい。突然ドンと突き飛ばされ、背中に衝撃と痛みが走った。 「いって……っ」 「てめえ気色悪いこと言ってんじゃねえよ。クソホモ!」  そっちこそそんなことでイキってんじゃねえよクソ野郎、と心のなかで唱える。
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