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第9話

「あはは、すげえ……ムクムクって硬くなった。好みだなんだ言って、所詮ホモだよな。ちょっと男に誘惑されただけでその気になってさ。なあ、わかったらさっきの俺に魅力がないみたいな暴言を今すぐ取り消せ」  唇を甘噛みしながら吐息混じりに囁かれると、腰が浮きそうになる。その反面、冷静な頭で言葉の裏を読み取ってしまった柊馬は、入江の中に潜んだ見栄と、意地と、自信のなさを嗅ぎ取った。  ――本当に、かわいげのない、エゴまみれのガキだな。  入江の頭の中は面白いくらいに自分のことばかりで、クソホモと蔑んでいる相手にまで、存在価値を認めさせようと必死なのが滑稽だった。彼を見ていると、どこに潜んでいたのかと思うほど、加虐心が刺激される。  面倒くさいだけの相手だと思っていたが、少し遊ばせてもらおうか、と悪魔の顔をしたもう一人の柊馬が笑った。 「取り消していいのか」  これで自分のペースに持ち込めたと得意になっていた入江だが、突然の真剣な空気に首を傾げる。 「せっかく、入江を嫌な気持ちにさせる前に諦めようって思ってたんだけどな……」  笑ってしまいそうなほど切なげな声音が口から飛び出し、思いのほか演技派な自分に驚く。こらえきれず腹筋が揺れ、その振動が密着した部分から入江に伝わった。きっと、秘めた思いを告白する前の緊張だと、受け取られているに違いない。
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