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第12話
「一生童貞でホモなんて可哀想すぎるから、素直になれたご褒美に触らせてやってもいい。でも、最後まではだめだからな」
かかった。ほくそ笑んでしまいそうになり、慌てて呆けた風を装おう。
「い、いいのか」
「ちょっと触るだけなら」
「……嬉しいよ」
入江が黙ったまま口角を上げる。思い通りにならなかった目障りなホモが、自分に惚れていたと判明して愉快で仕方ないらしい。生理的な嫌悪感を上回るほど、優越感という名の快楽に酔いしれている。
「でも俺童貞だから、入江の気持ちいいところ教えて……」
返事を聞くより先に入江のシャツをめくりあげた。さっさとその気にさせて、大嫌いなホモに翻弄されるという屈辱を死ぬほど味わわせてやりたい。
「バカ、がっついてんじゃねえ」
「ごめん。ずっと好きだった入江に触れるんだと思ったら興奮して……」
咎められても気にすることなく、まくり上げたシャツの端を「抑えてて」と入江に指示する。
「てめ、図々しいんだよ」
「童貞だからスマートにできなくてごめん」
童貞という事実を盾に口先だけの謝罪をして、露になった胸の先端を引っかいた。
「ん……っ」
「乳首感じる?」
「んなわけねえだろ。男の乳首なんか触ってどうする気だよ」
眉間に皺を寄せながらとんちんかんな抗議をする入江がおかしい。
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