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第5話

 途中で思い出したお使いを済ませ、亨は家に連れてきた三品を居間に案内した。頼まれた野菜を店に置いて父親に説明をし、戻ってきた。手には小さな救急箱がある。 「連れてきた癖に、消毒しかできなくてすいません。」 「この店って......」 「うちです。生徒の店って分かるともう来てくれなくなるんじゃないかと思って。」  しゅんとしょげるところが可愛らしい。先生と言っても特別授業の講師だから問題があるとも思えないけれど、というのは三品の緩い考えだ。 「おでこ凄いことになってますよ。」  そういうと片手で三品の前髪を除けてスマホのカメラを内転させて見せた。ほら、とでもいうように横から一緒に画面をのぞき込んできた亨が、擦り傷とすでに赤黒い斑点が出てきたたんこぶの部分を指さした。 「ぶっ!あはははは、何これ!」  滑らかな額にたんこぶと青あざのちぐはぐさが妙におかしくて三品は笑い出した。 「笑い事じゃないですよ!頭打ってもしものことがあったらどうするんですか!」  あまりに真剣に心配する様子に三品のいたずら心が首をもたげてくる。 「ラブホ街を偶然通りがかった高校生に通報してもらうってのも乙かもね。」 「先生っ!」 「ごめん、ありがとう。ご飯食べ損ねちゃったからお店で食べていってもいいかな?」  三品はいつものように小首をかしげて微笑みかけてくる。本気で心配しているのにまともに相手にされないのが歯がゆかった。  店側の入り口から顔を出すと亨の父親も顔を覚えていたようで「へえ、先生だったんですね。また意外な。」と声をかけてきた。 「よく言われるんですがどうしてなんですかね?」  人当たりが良くて見た目も良い。浮世離れした雰囲気に甘え上手そうなところが、飼い猫みたいだ。とは流石に口にせずお茶を濁した。 「生徒の前で教えてるところが想像できないなあ。」

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