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第8話

 言われたことを理解しようとしたのに、三品のマシュマロのような微笑みがあっという間に近づいて、唇が温かいもので包まれた。理屈より先に誘いかけてくる唇と舌に身体が反応してゆく。うっすらと開いてその味を感じれば、触れた部分から広がる甘い痺れが本能の深いところを容赦なく刺激して身体を支配する。  欲望の輪郭を写し取るように長い指でズボンの布を押し付けられて頭がかっとした。衝動を行動に移すのを押しとどめていた最後のタガはあっさりと外れた。 いくら我慢強い犬だって、鎖を外されたら欲望のままに走り出すのを止めることはできない。  夢に見ていた三品の舌を味わい、絡め取ってゆく。全身を包む快感の波にのまれて二人の唇の間から熱い息が零れる。  キスしたまま亨は膝立ちになって相手の背中に腕を回し、抱きしめるように抱え上げて立ち上がった。  ソファかベッドか、人の家では行き先がわからない。つま先立ちになった三品が自分より一回り大きな身体をソファへといざなってゆく。性急に求める気持ちが触媒になり、体をさらに熱く昂らせた。  二人してソファに倒れこむと、亨は自分の頬を包んでいる両手を引きはがし、座面に押し倒した三品の顔の両脇に押さえつけた。上と下で絡む視線が蜘蛛の糸のように互いを引き寄せてゆく。  唾液が混ざり合い酒の匂いも消えた咥内を、亨はお預けを解かれた犬のように貪った。ひとしきりお互いの味を確認すれば、ズボンの下から主張する欲望をごまかすことはできなくなる。  服を脱がせる時間も惜しく、三品のシャツを引きずり出しスラックスを下着ごと脚から引き抜き、裏表になるのも気にせず投げ捨てる。  露わになった裸身と熱く昂っている中心に感動して固まっていた亨のズボンに手が伸びた。あ、とでもいうように口を開き微かに身を引きながらも亨はその手を止めることはなかった。  三品が焦らすようにゆっくりとジッパーを下ろし、下着のゴムに指をかけてずらせば、中からはじけそうな屹立が震えて飛び出した。  今にもむしゃぶりつきそうな相手を誘い、三品は甘く笑って身体をくねらせた。 「それでこそ、高校生男子の性欲だ。」  三品は酔ってなんかいなかった。でもだからって何が変わるというんだ?  促されるまま唇と指先で三品の身体中を辿って、甘い声の上がるポイントを探り当てて行く。仰け反る背中や跳ねる腰をご褒美にようやく許された中に進めば、二人の吐く息が重なった。

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