3 / 5
3
三浦の親指は俺の頚動脈を探り、きちんと場所を確認してからそれを静かに塞き止めた。ぐうっ、と、指の腹が太い血管をゆっくり押し潰す感覚に震えた。
どくん、どくん。
こうされるとき、普段気にもしない首の血流を感じる。
強く押さえつけられたら多分数秒でトべるとこ。だけど三浦はそんなことしない。やったこともない。少し俺の吐息が浅くなった程度ですぐに離される。
本当に三浦はよくわかってる。そんな出だし一発で簡単にオとしたりしない。
流れるように、俺の喉仏に圧がかかった。血管の次に潰すのは気管だ。
あぁそう、こっち。こっちが好き。
じわじわ嬲られて、三浦の匙加減ひとつで全部キまるこっちが好き。
「か、はっ、ッ…」
「ふふっ、あははっ、絞められてでかくしてんじゃねーよ」
「……ぁ、あ っ゙、」
絶妙な力加減。緩く首を絞め上げられながら、多分、ケツのほうも締められてる。
三浦が、腕に体重を乗せ始める。
「……ア ゙っ…、ぃ、ゔら、もっど……」
「長沢。好きだよ」
俺の首の肉に三浦の端正な指が食い込んでいく感覚を拾う。たまんない。
どんどん吸い込める酸素が少なくなっていく。三浦の徐々に強くなる手の力は、俺から声を、そして呼吸を確実に奪っていく。
苦しくないといえば嘘だけど同等の快感でそんなの紛れている。
痛くはない。むしろ気持ちいい。まあ、セックスしてるし気持ちいいのは当然だけど。
「ぃ…ぅ、……」
みうら、と呼んだ。が、そろそろ発音がやばい域に来てる。
なおも絞める力はどんどん強くなる。爪がぎっちりと立てられているのがわかった。
口がもう閉じられない。
そんなときに三浦と目が合った。
ぎらぎらした性欲と剥き出しの殺意を明け透けに向けられ、どうしようもないほどに、勃つ。
きっと三浦になら殺されたって気持ちいい。
「なに?」
間抜けな呼び掛けにも三浦はちゃんと気付いて返事をくれる。俺自身でもよく聞こえない小さな声を、ちゃんとすくい上げてくれる。
嗚呼、好き。好きだ。愛してる。
三浦、世界で一番好き。
このまま死にたい。
三浦と繋がって、三浦に殺されて、全部がぜんぶ三浦で満たされて。最高に幸せな気分で死にたい。
腕が持ち上がらない。視界にもやがかかる。意識が薄まる。
でも三浦の存在を全身で強く感じている。
「……ご、…ぉ……え゙……」
「やだ」
即答だった。
三浦の声はどんなときも何よりも鋭利に俺の耳を貫く。
三浦が、笑った。
見下すように眉まで下げて、歪にニヤリと片方の口角だけをあげて笑う三浦。
その顔を見てイッた。
射精しながら、最後まで三浦を目に映しながら。
俺の意識はぷつりと途切れた。
ともだちにシェアしよう!